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見過ごされがちだった、父子家庭が抱える生活・育児の困難

2020年2月5日(水)13時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

シングルファザーの困難は陰に隠れがちだが kohei_hara/iStock.

<10代の非行の出現率を一般家庭と比較すると、母子家庭では2倍、父子家庭では4倍と高くなっている>

離婚率の上昇もあり、最近では子どもの7人に1人がひとり親世帯で暮らしている。日本はひとり親世帯に困難が凝縮する社会で、子ども全体の貧困率は13.9%だが、ひとり親世帯に限ると半分を超える(2015年統計データ)。ここまで落差が大きい国は、世界でも他にない。

経済的な苦境が子どもの育ちに影を落とすことがある。問題行動の頻度とも関連しており、非行との相関はデータではっきりと可視化できる。昔は、両親が揃っていない家庭は、一般家庭と比して非行少年の出現率が高いことが白書で示されていた。今はこういう分析はあまり見かけないが、警察庁の原統計では非行少年の数が親の状態別に集計されている。

2015年の警察庁『犯罪統計書』によると、同年中に刑法犯(交通関係の業務上過失を除く)で検挙・補導された10代少年は4万7173人で、うち母子家庭の子が1万4851人、父子家庭の子が3030人となっている。非行少年の4割近くがひとり親世帯ということになる。

同年の『国勢調査』に出ている一般世帯の10代少年は1141万3988人で、うち母子世帯は140万301人、父子家庭は16万6566人だ。これらをもとに、3つのグループの非行少年出現率を計算できる。<表1>は割り算の結果だ。

data200205-chart01.jpg

10代少年全体の非行少年出現率は0.41%なのに対し、母子世帯では1.06%、父子世帯では1.82%となっている。母子世帯は全体の2倍、父子世帯は4倍以上だ。分子の非行者は、繰り返し捕まった少年を重複してカウントした延べ数だが、父子世帯からは55人に1人の割合で非行少年が出ている。

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