最新記事

アメリカ政治

トランプから「弾劾された大統領」の汚点は消えない、永遠に

Impeachment Is a Permanent Stain

2019年12月23日(月)16時50分
リリ・ルーフボロー

憲法に反する宣言は、彼らがいかに大統領の言うなりになっているか、今回の弾劾がいかに必要かを浮き彫りにする。大統領に屈服している状況を少しは挽回できたかもしれない歴史的チャンスだというのに、上院は弱腰で、行政府の暴走を許す結果になっている。上院は、国民の生活向上のために下院が可決した何百という法案の採決を拒み、今度は権威を投げ捨ててトランプのプライドを守ろうとしている。

共和党の弱さをうかがわせる話だ。明らかに大統領にふさわしくない男にひれ伏し、自分たちの力をさらに譲り渡すことしかできない。統治するにはあまりに疲弊し腐敗していて、トランプを王様にしておくほうがましなのだ。

以上はいずれも今に始まったことではなく、意外でもない。言うまでもなく、共和党は話をすり替え、自分たちがトランプに屈したのではなく、民主党が弱腰なのだと主張するだろう。

意外なのは、そうした捉え方を左派が受け入れていることだ。下院が強気で、有力な証拠があり、弾劾が画期的なものであるにもかかわらず、共和党はなぜかメディアの多くと世論を丸め込んでいる。有罪でなければ意味がない、弾劾は死に体の下院による異議申し立てのようなもので下院の見当違いを裏付けるだけだ、と思い込ませているのだ。

繰り返すが、アメリカの歴史において弾劾訴追された大統領はこれまで2人だけだ。そして今、3人目の弾劾決議が可決されたばかり。その歴史的な重みを見誤ってはならない。これから始まる裁判で有罪にならなくとも、トランプは弾劾訴追された大統領として歴史に刻まれることになる。それは未来永劫消えない大きな汚点だ。

トランプ弾劾に対するリベラル派の懸念は分からないでもない。前回の弾劾では共和党が躍起になってビル・クリトンのあらをほじくり出そうとした。そのためにかえって有権者はクリントンに同情し、かつてなく支持率が上がる皮肉な事態となった。

共和党の堕落も明らかに

とはいえ歴史は直近の世論調査結果よりも長いスパンで審判を下す。民主党が誇っていた見識ある政治家としてのクリントンのイメージはその後どんどん色あせていった。弾劾という汚点は年月がたつにつれて大きく広がるのだ。

クリントンの汚点はその後も共和党が強調し続けたこともあって大きく広がり、有権者に「クリントン夫妻は腐敗している」というイメージを植え付ける結果となった。妻のヒラリーが大統領選で敗北したのはそれが一因と言っても過言ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英首脳、ウクライナ和平巡り協議 「有志国連合」の

ワールド

米政権、薬価引き下げでさらに9社と合意 17社中1

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、円安や米国株高で 5万円

ビジネス

為替の行き過ぎた動きには適切な対応取る=三村財務官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中