最新記事

中国共産党

ウイグル弾圧は習近平だけの過ちではない

READING CHINESE CABLES

2019年12月17日(火)19時45分
水谷尚子(明治大学准教授、中国現代史研究者)

新疆の一体化政策は、国内植民地の状態から実質的な中国化を実現するための綿々と続く中国共産党の戦略である。1950年代から80年代までは経済的理由からその遂行の速度が緩かっただけであり、現在の急激な変化は中国の経済力増大と密接に関係する。

文書流出の女性に殺害予告が

星の数ほどの監視カメラを各地にちりばめたウイグル人監視システム「一体化統合作戦プラットフォーム」では、2017年6月中旬からさまざまなデータが集積され、分析結果が強制連行に使われた。データは自治区党委員会の「厳重取締り・敵地攻撃戦前線指揮部」という名の機関に集積されている。その名称から共産党は新疆政策を「敵地攻撃」と位置付けていることが分かる。システムには出入国記録や在外中国大使館の情報が記され、外国籍を取得したウイグル人も「国境地帯で規制を張り、入境したら身柄を確実に確保せよ」と強制連行の対象となることが流出文書に記されている。

今回の上層部文書の流出に関わったオランダ在住のウイグル人女性は現在、オランダ警察の庇護下にあるという。文書が公開されるまでの間、彼女は「中国当局から殺害予告を受けていた」と、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に語っている。

「遅れて来た帝国主義国家」の民族浄化を、外国人であるわれわれはどうやったら止めることができるのだろう。

<本誌2019年12月24日号掲載>

【参考記事】ウイグルを弾圧する習近平の父親が、少数民族への寛容を貫いていた皮肉
【参考記事】ウイグル民族の文化が地上から消される

20191224issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月24日号(12月17日発売)は「首脳の成績表」特集。「ガキ大将」トランプは落第? 安倍外交の得点は? プーチン、文在寅、ボリス・ジョンソン、習近平は?――世界の首脳を査定し、その能力と資質から国際情勢を読み解く特集です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スターバックス、中国事業経営権を博裕資本に売却へ 

ワールド

クック理事、FRBで働くことは「生涯の栄誉」 職務

ワールド

OPECプラス有志国の増産停止、ロシア働きかけでサ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRB12月の追加利下げに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中