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ペンス米副大統領演説と中国の反応を読み解く

2019年10月28日(月)12時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

「四の五の言うんじゃなーい!」と叫ぶ彼女の気炎はまだまだ続くが、これくらいにしておこうか。

「なんだ、中国と仲良くしたがってるじゃないか」:環球時報社説

10月25日付の環球時報の社説には類似の抗議はあるものの、「あれ?なんだかトーンが変わってきたぞ...」という疑問を呈しているので、その部分だけをご紹介する。曰く:

――ペンスは演説の後半で、中国と貿易協議の合意に達したいと望み、米中関係を改善したいという積極的な態度を示している。ペンスは中国とデカップリングしたい(中国共産党や中国政府や中国企業との接触を断ちたい)とは思ってないとさえ言い、かつ米中両国の指導者の個人的な友誼を強調している。おまけに米中関係が両国人民にさらなる福祉(と利益)をもたらし、美しい関係と未来を達成することを希望しているとまで言っているのだ。

――ペンスはさらに、「トランプ大統領は特に米中貿易協議が良い成果を出すことに非常に積極的で、中国とは経済的にも文化的に交流を続けたいと望んでいる」と強調した。

――ペンスはトランプが「米中両国は朝鮮半島非核化や中東問題などに関して協力を継続していくことは米中両国にとって殊の外重要である」強調したとも言っている。

以上、環球時報は「結局トランプは<中国との再接触>を望んでいるのではないのか」と疑問を呈している。

期待していただけに、中国を「いい気にさせてしまう」ような演説を、ペンス副大統領にはやってほしくなかった。これでは逆効果だ。

僭越ながら、11月9日発売予定の拙著『米中貿易戦争の裏側』は、まさにペンス演説の両面性を裏付ける考察をしたつもりだ。また前述の「筆者注」の詳細も、当該著作の中で検証した。

(なお、本コラムは中国問題グローバル研究所の論考から転載した。)


中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(11月9日出版、毎日新聞出版 )『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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