最新記事

中米移民

米国境で溺死のエルサルバドル父娘 写真拡散は悲惨な移民たちを救えるか?

2019年7月2日(火)17時50分

もう1枚の写真

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、今回の写真を2015年に地中海で溺死し、トルコの浜辺に流れ着いたシリア難民のアイラン・クルディちゃんの写真と比較している。この写真も当時、欧州で大きな反響を呼び起こした。

アイランちゃんの写真と同じく、今回の父娘の写真もまた、このような衝撃的な写真を公開することの是非が論じられた。一部のコメンテーターは、写っているのがヨーロッパ人もしくは米国人だった場合、欧米メディアは掲載しないのではないかと批判している。

アリゾナ州に拠点を置く人権団体、コリブリセンター・フォー・ヒューマンライツのロビン・ライネケ氏は、このような写真使用は、国境での死亡防止にはほとんど、もしくは全くつながらないと指摘する。

一方、国境で命を落としている移民の実態を人々に直視させるために、写真の公開は正当だとする向きもある。

「大変悲しいことだが、これは本当に必要なことだ」。行方不明になった移民の捜索活動を手掛けるボランティアグループをサンディエゴで立ち上げたラファエル・ララエンザさんはそう語る。

多くの国々はこれまで、移民を寄せ付けないためのフェンスなどを設置しており、欧州連合(EU)や米国は隣国に対し、移民の流入数を制限するよう要求してきた。

トランプ大統領は、メキシコ国境からの不法移民の流入が止まらないのであれば、新たな関税をかける考えを示している。

過去10年間で最多となる移民が国境に押し寄せる中で、どちらの国も移民収容施設において適切なケアを提供できていない。米国側の施設では子どもたちが数週間にわたり十分な食料を与えられず、劣悪な衛生状態に置かれている、と移民弁護士は指摘する。

米税関・国境警備局は25日、長官代行の辞任を発表。米上院は26日、メキシコ国境の移民対策に46億ドル(約5000億円)を拠出する法案を可決した。

(翻訳:宗えりか、編集:下郡美紀)

[マタモロス(メキシコ) 26日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中