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ヘイトスピーチ

「差別」投稿で選手を追放する危うさ

2019年6月22日(土)15時40分
ピーター・シンガー(プリンストン大学教授)

投稿が同性愛者への憎悪を表現していたり、暴力をあおる内容だったりしたのなら、協会の判断はまだ理解できる。しかし、あの投稿が同性愛者への憎悪表現だと見なされるのなら、たばこの箱に記される警告文も喫煙者への憎悪表現になる。

地獄に向かって歩いているのに、そのことに気付いていない人がいるように見えれば、警告してやりたいと思うのは不思議ではない。フォラウは、そのような感覚でインスタグラムに投稿したのだろう。

実際、写真に添えて「イエス・キリストはあなたたちを愛している」と書き、反省して行動を改めるよう呼び掛けている。そうすれば地獄から逃れられる、というわけだ。これがヘイトスピーチだとは思えない。

では、オーストラリア・ラグビー協会はどうすべきだったのか。人は誰もが自らの信仰を表明する権利があるとだけ述べておけばよかった。

オーストラリア人のうち、信仰を非常に重んじているという人は14%だけ。しかも、この全てが地獄の存在を信じる宗教を信仰しているわけではない。つまり、ほとんどのオーストラリア人は、フォラウの投稿を真剣に受け取るよりも、笑い飛ばす可能性のほうが高い。

笑い飛ばしておしまいにする――それがフォラウの投稿に対する最も適切な反応だったのかもしれない。

©Project Syndicate

<本誌2019年6月25日号掲載>

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