最新記事

中国

日中首脳会談に望む──習近平は「一帯一路」で「宇宙支配」を狙っていることに気づいてほしい

2018年10月22日(月)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ご存じだとすれば、このような危険な選択はしないだろうし、また、ご存じないとすれば、中国に協力の手を差し伸べることが、長い目で見れば、どれだけ日本国民の利益を大きく損ねるかに注目していただきたい。「目の前のチャンス」に目を奪われてはならないのではないだろうか。

トランプがINF全廃条約から離脱する真の狙いは中国か

トランプ米大統領は10月20日、旧ソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱と、これに伴って新型核兵器の開発に着手する方針を表明した。

ロシアが条約に違反しているのが理由だとしているが、注意深く聞いているとトランプは「中国を牽制するためでもある」という趣旨のことを言っているし、2017年4月、当時の太平洋軍司令官だったハリス氏は「INF条約は、中国や他国の巡航ミサイルや地上発射型のミサイルへの対抗力に制限を課しており、アメリカが対抗することを困難にしているので、再考しなければならない」と言っていた。

つまり、INF全廃条約は旧ソ連との間だけで結ばれているので、現在のロシアには制限を掛けることができるが、中国を牽制することができないのである。

したがって、INF全廃条約に加盟していない中国が「空母キラー」と呼ばれる弾道ミサイルの開発を推進していることに対抗して、アメリカが今後新型核兵器の開発に着手できるための正当な理由を見つけるためにINF全廃条約からの離脱を考えたのではないかと思うのである。

それくらい、アメリカは中国を警戒しており、特にトランプは「中国製造2025」が完遂するのを何としても阻止したいと思っている。

「中国製造2025」には「宇宙開発」への狙いが深く潜んでおり、「2016 中国宇宙開発」白書は、2015年に発布された「中国製造2025」とペアになっているとみなすべきである。

すなわち、「一帯一路」には、「宇宙支配」という「中国の夢」「強軍の夢」が込められていることを、日本は見落としてはならない。

日本は今「中国の夢」「強軍の夢」が実現するように手を貸そうとしているのである。どんな条件を付けようとも、「一帯一路」に協力するということは、そういうことだ。

このことに、どうか日本は気が付いてほしいと切に望む。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中