最新記事

米朝関係

米朝首脳会談前に拘束されたアメリカ人は解放されるか──帰らなければ会談中止の声も

2018年4月20日(金)14時45分
ジョー・ディファジオ

平壌での記者会見で容疑を認めるキム・ドンチョル(2016年3月) KCNA-REUTERS

<解放に向けて努力しているとトランプは言うが、米国市民の命の問題なのに非核化と比べて関心が低いという不満も聞こえる>

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との、初の米朝首脳会談を控えたドナルド・トランプ米大統領は4月18日、日本の安倍晋三首相との共同会見の中で、現在北朝鮮に拘束されている3人のアメリカ人について言及し、アメリカが解放のために北朝鮮と協議していることを明らかにした。

「3人のアメリカ市民を取り戻すための努力を続けている。米朝は非常に良好な対話を続けているので、実現する可能性は高いと思う」と、トランプは語った。

(3人が、ワームビアのような昏睡状態でなく無事に解放される保証がないなら、北朝鮮との対話などありえない)


拘束中の3人の姿が最後に確認されたのは、昨年6月に米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮特別代表が北朝鮮を訪問し、拘束中のバージニア大学の学生オットー・ワームビアが解放された時だ。ワームビアは昏睡状態で帰国したが、その後死亡した。

(北朝鮮と和平を結びたいのはわかる。だが金正恩は、彼がオットー・ワームビアにしたことの罪を償わなければならない)


3人のうち1人は、韓国系アメリカ人のキム・ドンチョルで、2015年にスパイ容疑で逮捕され、10年の拘禁刑を言い渡された。中国と北朝鮮の国境地帯にある経済特区で活動していたとされている。

その他の2人は、いずれもピョンヤン科学技術大学で教授職にあったトニー・キムとキム・ハクソンで、2017年5月に身柄を拘束されたが、その理由は明らかになっていない。キム・ハクソンは90年代に中国から渡米して米国籍を取得したと、ニューヨーク・タイムズは報じている。

「非核化」とどちらが優先か

国務省の報道官は本誌の取材に対し、「アメリカ市民の安全、身柄の保障は最優先事項の1つ。外交交渉の機密事項についてコメントはできない」と話している。「確かなのは、米朝首脳会談の準備のために米朝両国が直接対話を行い、北朝鮮が非核化について協議する意思を示したことだ」

だが、3人の解放は「非核化」に比べるとさほど重要視されていない、と専門家は言う。

「トランプ政権が拘束中の3人について全体の交渉の中でどのように位置付けているか、根本的な疑問がある」と、米シンクタンク「ウッドロー・ウィルソン国際研究センター」アジアプログラム部長のアブラハム・デンマークは言う。「3人が解放されなければ、北朝鮮との交渉は続けられない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中