最新記事

韓国事情

韓国のPM2.5は中国から飛来したわけではなかった 地下鉄無料の対策に賛否両論

2018年1月26日(金)18時10分
佐々木和義

PMに霞んだソウル市 撮影:佐々木和義

<韓国で猛威をふるっているミセモンジ(微細粉塵)。ソウル市は、PM2.5に伴う公共交通機関の利用無料化をはじめて実施した>

韓国オンラインショッピングモールの2018年1月10日から16日の間、ミセモンジ対応マスクの売上げが前週比271%、前年同期比980%を記録した。幼児マスクは前年同期比で1206%に達している。

韓国では粒子状物質PM10をミセモンジ(微細粉塵)、PM2.5はチョミセモンジ(超微細粉塵)と呼ばれており、2015年のPM2.5の濃度は1立方メートル当たり32マイクログラムで、経済協力開発機構(OECD)のなかで最も高く、1998年以降に行われた調査でも17回中1位が12回で大気汚染が深刻だ。

ソウル市では公共交通機関の利用を無料化

韓国環境部とソウル市、仁川市、京畿道は、2018年1月17日の午前6時から首都圏でミセモンジ非常低減措置を実施する発表した。発表に先立つ16日の午後4時時点のPM2.5濃度はソウル市が1立方メートル当たり85マイクログラム、仁川市と京畿道は102マイクログラムだった。

首都圏の行政や公共機関所属の役職員52万7000人を対象に17日と18日の2日間、車両2部制度を実施。奇数日は車両番号の最後が奇数の車両、偶数日は偶数の車両のみ利用できる制度で、民間は義務ではないが、ソウル市は積極的な参加を促すため公共交通機関の無料化を合わせて実施した。

PM2.5に伴う公共交通機関の利用無料化をはじめて実施したのは2018年1月15日で、ソウル市は47億8000万ウォン(約4億9600万円)を市民の税金から負担している。

始発から朝9時までと夕方6時から9時まで通退勤者が地下鉄や市内バスを無料で利用できる措置で、市は自家用車の利用者が減り、公共交通機関の利用が20%程度増えると期待したが、道路交通量は1.8%の減少にとどまり、地下鉄利用者の増加も3.5%、市内バス利用者は4%と期待とはかけ離れた数値で、市長の売名行為に過ぎないという批判の声があがっている。

効果がないと京畿道から批判

ソウル市に隣接する京畿道は無料化を行っていない。南景弼(ナム・ギョンピル)道知事は、全運転者の20%が参加すればPM2.5度は1%程度の減少が予測されるが、2%未満では効果がなかったと主張する。首都圏の公共交通の無料運行を年15日に実施すると必要な予算は1000億ウォン以上で、バスの無料乗車より電気バスを導入する方が良いとソウル市を批判する

京畿道の批判に対し、ソウルの尹準炳(ユン・ジュンビョン)副市長は、粒子状物質は手をこまねいていてはならない問題とし、警戒心を高めることで長期的に効果が出ると説明。50億ウォンが惜しくないわけではないが、市民の安全と健康に関することは何もしないよりは過剰に対応する方がより良いと反論する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中