最新記事

中朝関係

北朝鮮問題、中国の秘策はうまくいくのか――特使派遣の裏側

2017年11月20日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の対北秘策を練る習近平総書記 Jason Lee-REUTERS

17日、習近平総書記の特使が北朝鮮を訪問。名目上は党大会の報告だが、実際上は米朝首脳会談の模索だ。その実現のために中国は北朝鮮に対して持っているカードを切っていない。今ようやく中国の秘策を明かす時が来た。

中国の秘策とは

これまで「中国には対話を通して北朝鮮問題を解決するための秘策がある」と書きながら、まだ公開すべき時ではないと判断して、具体的な内容を書いてこなかった。「もったいぶるな」というご叱責も受けたが、今ようやく、それを明らかにしても大丈夫な時が来たと思う。

そこで先ずは、その秘策とは何かを、簡潔に申し上げたいと思う。

その秘策とは、「米中蜜月を北朝鮮に見せつけた上で、北朝鮮と交渉に入り、中国が北朝鮮に対して持つ3枚のカードをちらつかせながら、北朝鮮の核・ミサイル開発を凍結させ、米朝首脳会談へ持ち込む」というものである。

3枚のカードとは、これまで何度も書いてきたが、以下の3つだ。

カード1:中朝軍事同盟の破棄

カード2:断油(原油輸出の完全停止。北への「油」の90%は原油)。

カード3:中朝国境線の完全封鎖。

「カード1」に関しては今年8月に中国の「環球時報」が北朝鮮のグアム島周辺へのミサイル発射予告に対して「もし北朝鮮が米領土領海に先制攻撃をしてアメリカが反撃してきた場合、中国は中立を保つ」と宣言している。つまり「中朝軍事同盟は守らない」ということだ。9月4日付けコラム<中国が切った「中朝軍事同盟カード」を読み切れなかった日米の失敗>に書いたように、中国のこの威嚇に対して、北朝鮮はグアム島周辺へのミサイル発射を諦め、日本の北海道上空を飛び越えるルートに変更した。

「カード3」に関しては、かつて毛沢東も実際に行なったことがあり、また今年4月下旬に北朝鮮が核実験の予告をした時にも中国はこのカードを使って北朝鮮を威嚇し、5月初めの一帯一路国際サミットの時には核実験を抑え込んでいる。

このように、中国のこれらのカードを用いた北朝鮮への威嚇は一定の効果をもたらしている。

ましてや、北朝鮮が最大の敵とするアメリカと中国が蜜月とあっては、ひとたまりもない。北朝鮮にとっては、それこそが最大の恐怖だ。

そこで中国は、「北朝鮮に対しては何もしない状況で」、その恐怖だけを北朝鮮に現実として見せつけ、あとは特に「制裁を強化することなく」、むしろ「カードを使わない」ことによってカードの威力を温存させ、北朝鮮と「交渉に入る」という腹づもりなのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、戦争継続へ有力実業家に資金要請報道 自

ワールド

訂正-トランプ氏のガザ和平案、8カ月でハマス武装解

ワールド

米上院、国土安全保障省への資金法案可決 ICEは除

ワールド

中国、米通商慣行の対抗調査開始 即時の報復回避
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 7
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 8
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中