最新記事

テクノロジー

自動車軽量化へ「木」に脚光 鉄の5倍強い新素材CNFの実用化急ぐ

2017年8月20日(日)16時45分

矢野教授は「車用材料という大きな市場を狙いたい」と話す。軽量化素材として現在広く使われる1キロ200円の高張力鋼(ハイテン材)などと競えるよう、同教授は30年までに1キロ約500円を目指す。  古河電気工業<5801.T>も電線ケーブルで培った樹脂加工技術を応用し、製造コストを現状の約10分の1に下げる技術を開発中だ。試作では1キロ400円のめどがついており、24年には量産技術を確立する考えだ。   

車用の内外装部品メーカー、ダイキョーニシカワは金属から樹脂への切り替えを進めており、同社広報の石野幸彦氏は「CNFを混ぜることで樹脂の可能性がもっと広がるのでは」と期待する。

既存素材も競争力強化

CNFは「ポスト炭素繊維」との声もある。炭素繊維は軽量化ニーズに応える新素材として先行してきたが、製造コストはCNF同様まだ高く、リサイクル性が弱い。ただ、炭素繊維を織り込んだ強化樹脂(CFRP)の採用は広がりつつあり、独BMWやトヨタなど一部車種で使われている。

炭素繊維市場を先頭で引っ張ってきた東レ<3402.T>は「製造プロセス全体でペイするか、部品として値段が下がるかどうかが一番大事」(広報)とし、加工しやすい中間材料や加工方法などを開発して取引先にコストが下がる提案をしているという。 

新日鉄住金<5401.T>の栄敏治副社長は、現状ではアルミが鋼材市場を侵食しているとする一方、「CNFはまだ研究段階」と語る。ただ、軽量化に向けた競争力強化は「極めて大きな経営課題。最優先で進めている」といい、対抗戦略の1つとして、例えば炭素繊維と鉄を組み合わせるなどの「複合素材」を検討している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド通貨ルピーが史上最安値更新、1ドル90ルピー

ワールド

フィリピン中銀、成長鈍化で12月利下げ可能性高まる

ビジネス

物言う投資家ジャクソン氏、暗号資産トレジャリー企業

ワールド

ロシア経済、ルーブル高に適応必要 輸出企業に逆風=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中