最新記事

シリア情勢

「アレッポの惨劇」を招いた欧米の重い罪

2016年12月22日(木)10時40分
ジュリオ・テルツィ(元イタリア外相)

 欧米の自由な民主主義国家が、恐るべき人道危機を手をこまねいて見ている――考えただけでもぞっとする話だ。適切な行動を取っていれば、イランの介入を食い止めることができた。

 だが、欧米はスレイマニの訪ロもイランの戦闘参加も、見て見ぬふりをした。それどころか、シリアの将来を話し合う会議へのイランの参加を認めた。これでは介入に褒美を与えたようなものだ。

 無関心と無反応は犯罪者を増長させるだけ、というのが歴史の教訓だ。88年夏、ムジャヒディン・ハルクの活動家を中心とする政治犯3万人がイラン全土で処刑された。これに対する欧米の反応は、完全な沈黙だった。この沈黙で利益を得たイラン人の多くが、ロシアと手を組んでアレッポの虐殺を主導しているのだ。

【参考記事】アレッポ陥落、オバマは何を間違えたのか?

 シリアの現状は欧米の責任だ。過去の恥ずべき誤りを埋め合わせるための時間は残り少ない。それでも、シリアでの蛮行は重大な経済的・政治的結果を招くと、イランに思い知らせることはまだ可能だ。内戦の原点、つまり民衆の意思と孤立した独裁者の対決という構図に立ち戻ることも不可能ではない。

 国際社会は国際刑事裁判所や戦争犯罪法廷を動かすことで、イランとロシアにストップをかけられる。今こそ沈黙を破って声を上げるときだ。さもなければ、歴史の厳しい審判を受けることになる。

[2016年12月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

与党「地滑り的勝利」で高市トレード再開へ、日経6万

ワールド

高市首相、消費減税「やった方がいいと確信」 改憲は

ワールド

自民単独300議席超、「絶対安定多数」上回る 維新

ビジネス

自民大勝でも「放漫財政にならない」=片山財務相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 6
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 7
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 8
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 9
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中