最新記事

犯罪

インドネシアが子供相手の性犯罪を厳罰化、化学的去勢も

2016年10月17日(月)18時12分
ティム・マーチン

Kanupriya Kapoor-REUTERS

<14歳の少女が集団暴行の末殺された事件をきっかけに、インドネシアでは子供相手の性犯罪者には去勢や死刑などの厳罰を科すことになった。これは、世界的な趨勢でもある>(写真は、14歳の少女を殺した容疑者たちの公判)

 インドネシアの国会は先週、子どもが相手の性犯罪者に対して、化学的去勢や禁固10年以上の実刑、最高は死刑もありうる厳罰を科す法案を賛成多数で可決した。英BBCニュースが伝えた。ジョコ・ウィドド大統領が5月に大統領令を発令していた。

 インドネシア医師会は、厳罰化は医師の職業倫理を侵害するものだと抗議する声明を発表した。新たな罰則によって、子どもを対象にした性犯罪の再犯者には最低で10年の禁固刑が科せられるほか、刑期を終えて出所した後もマイクロチップを装着して捜査当局が追跡したり、薬物などを投与する化学的去勢も可能になる。英インディペンデント紙によると、「性犯罪者が子どもを殺害したり、心的外傷や性感染症にした」場合は死刑にする。

【参考記事】カンボジア「小児性愛天国」の悪名返上か

 今回の厳罰化のきっかけは、4月にスマトラ島で14歳の少女が未成年を含む少年らの犯罪グループに集団で性的暴行を加えられ、殺害された事件だ。少女の遺体は裸で木にくくりつけられた状態で発見された。

去勢は外科手術もしくは薬物で

 化学的去勢では、体内に女性ホルモンを注入して性的衝動や性行動を抑制する。すでにポーランドや韓国、ロシア、アメリカの複数の州でも導入済みだ。イリノイ州やオハイオ州、カリフォルニア州、アーカンソー州などでは、重い性犯罪の再犯者は出所の条件として、外科手術もしくは薬物による去勢を選択しなければならない。

 1991年に米ジョンズ・ホプキンス大学が行なったある研究で、化学的去勢をした後の5年間で再び性犯罪行為に及んだ割合は全体の10%以下だった。だが別の研究では、処置後に男性ホルモンのテストステロンが急激に増えたり、性的欲求が高まったりした事例も明らかになった。

【参考記事】韓国で悪質な性犯罪者は「去勢」に

 厳罰化を批判してきた国内の反対派は、すぐに去勢の実効性に疑問の声を上げた。

「化学的去勢を実施している国々でも、子どもに対する性犯罪は減っていない」とインドネシアの国家女性委員会は声明を発表した。「去勢には多額の費用がかかる。国民のお金を投資すべきなのは、被害者支援のほうではないのか」

(International Business Times)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

自工会会長、米関税「影響は依然大きい」 政府に議論

ワールド

中国人民銀、期間7日のリバースレポ金利据え置き 金

ワールド

EUのエネルギー輸入廃止加速計画の影響ない=ロシア

ワールド

米、IMFナンバー2に財務省のカッツ首席補佐官を推
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中