最新記事

米大統領選

【経済政策】労働者の本当の味方はクリントンかトランプか

2016年8月15日(月)17時40分
エミリー・カデイ

Chris Keane- REUTERS

<先週は、トランプとクリントンの経済対決が行なわれた。かつて米工業の中心地だったラストベルトで、それぞれの経済政策を発表したのだ。勝敗の決め手は「どちらが本当に労働者の味方か?」の一点。クリントンは、トランプを正義の味方と信じてしまった労働者の目を覚まさせようと必死だ> (写真は、ミシガン州デトロイト郊外の工場で支持者と握手するクリントン)

 労働者階級の真の擁護者は誰か?──先週、ミシガン州のラストベルト(衰退した工業地帯)でそれぞれの経済政策を発表した民主党のヒラリー・クリントン前国務長官と共和党の富豪ドナルド・トランプの勝敗の決め手はこの一点に絞られる。とくにクリントンの課題は、予備選を通じてトランプが巧みに作り上げた「クリントン=特権階級」のイメージを打ち破ることだ。

【参考記事】トランプ現象の背後に白人の絶望──死亡率上昇の深い闇

 トランプが提案する経済政策こそ、トランプのような不動産王とその同類たちの懐を肥やすたものだと、クリントンは訴えた。数百万人の労働者が、不公正な貿易協定を破棄し自身のビジネスノウハウで中西部に雇用を取り戻すというトランプの支持に回った。だが彼の経済政策の恩恵を受けるのは労働者ではない、とクリントンは言う。「世間にはなぜか、トランプは本当に中間層の味方で、金持ちや権力者にこれまでのツケを払わせてくれるという神話がある。信じてはいけない」

【参考記事】トランプ所有のホテルで宿泊客が激減

 それからクリントンは、数日前にトランプが発表した経済政策を1つ1つ解剖し、いかにそれが金持ち優先で、中間層や貧困層を無視しているかを説明した。

金持ちはさらに金持ちに

「トランプは新しい税の抜け穴を提案した」と、クリントンは皮肉った。法人所得税に15%の上限を設けるという提案のことだ。実施されれば、「トランプが負担する税率は数百万人の中流世帯より低くなる」。545万ドルを超える遺産にかかる相続税を廃止するという別の提案も、「99.8%」のアメリカ人には何の恩恵もない。

【参考記事】あのトランプとクリントンも一致、米国でインフラ投資に追い風

 自らを政策本位の実務家として演出したいクリントンは、トランプが描くて暗くて悲観的な雇用と生産の将来像は現実を反映していないと言う。民主党と共に、やればできるポジティブさを強調する。もちろんやり過ぎれば、賃金が停滞して苦しむ中間層の現実から浮いてしまう。クリントンはその綱渡りをやってのけようとしている。新しい産業を立ち上げるのが速いアメリカの潜在力と技術革新力、教育などをテコにして一気に競争に勝つ。その過程で、あまりに大きくなり過ぎた所得格差を是正する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨

ビジネス

英総合PMI、12月速報は52.1に上昇 予算案で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中