最新記事

LGBT

北朝鮮の「同性愛」事情、その知られざる実態を体験者が告白

2016年6月13日(月)16時51分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

Damir Sagolj-REUTERS

<脱北したゲイの男性が、韓国で自叙伝を発表。その英語版出版を機に著者がニューヨーク・タイムズに語った、人権なき国・北朝鮮、そして自由なはずの韓国での性的少数者としての暮らしとは>

 脱北し、韓国で小説家となった男性がいる。名前はチャン・ヨンジンさん。現状では、脱北者で唯一のオープンリーゲイ(カミングアウトした性的少数者)だとされる。彼は昨年4月、自叙伝小説『赤いネクタイ』を韓国で出したが、このたびその英語版が出版されることになった。

 近年になって、LGBT(性的マイノリティ)の権利擁護のための施策が各国で強化されつつあるが、権力者が人権の概念すらちゃんとわかっているか怪しい北朝鮮ではどうか。

軍隊では男性同士で

 北朝鮮にも、もちろん性的マイノリティはいる。

 たとえば昨年には、「北朝鮮のゲイ軍人」と題された画像が世界中のネットで話題を集めた。軍事境界線の韓国側に設置された監視カメラがとらえた動画をキャプチャーした複数枚の画像で、朝鮮人民軍の2人の男性兵士が、抱き合ったりキスをしたり、かと思えば一方がもう1人の求愛をはねつけるような仕草を見せている。

(参考記事:前線で火を噴く「愛の砲火!!」 北朝鮮のゲイ軍人画像に世界が注目

 これが本当に同性愛によるものかどうかは確かではないが、北朝鮮の兵役は10年以上にもなるため、厳しい軍紀に縛られた期間中に同性同士で「親密な関係」になることは珍しくないようだ。

(参考記事:軍隊では男性同士で...脱北者が語る北朝鮮のゲイ、レズビアン、トランスジェンダー

 だが、国家や社会が、彼らのために何らかの施策を行っているかといえば、そうではなさそうだ。

韓国で二重の差別

 チャンさんは米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、自分の生い立ちについて語っている。少年時代から、ソンチョルという名の同性の友人に恋心を抱き続けながらも、自分で同性愛者であることに気づくことすらできず、無理をして結婚した女性との生活の中で悩み続けたという。

 ひとことで言って、北朝鮮には同性愛という概念すら存在しないのだ。北朝鮮は、性的マイノリティを迫害するホモフォビア(同性愛嫌悪)の国ではないが、そうした人々に対する理解もない。

 時に、国営メディアが同性愛者に対するヘイトスピーチを行っていることを考えると、やはり性的マイノリティの尊厳は認められていないと考えた方がいいだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 9
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 10
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中