Noriyuki Hirata
[東京 22日 ロイター] - 日経平均が終値ベースの史上最高値を更新、反発基調を強めている。米半導体大手エヌビディアの決算を「無難」に通過したとの受け止めが広がる中、原油価格や金利の上昇が一服したことが追い風になっている。ただ、日米金利は高水準にとどまっている。債券と比べた株式の相対的魅力の低下に対する警戒感はくすぶり、株高が続くか半信半疑な見方も根強い。金利高を打ち返す成長期待の持続力が試される局面になってきた。
人工知能(AI)相場の中核に位置付けられるエヌビディアの決算後、アドバンテストや東京エレクトロンなどが軒並み堅調となり、個別材料が重なったソフトバンクグループは一時ストップ高となる上昇をみせた。「AI・半導体関連はやはり強い」と岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部フェローは話す。「エヌビディアの決算で市場成長に対する確信が深まった」という。
エヌビディア株自体は売り優勢となったが、決算発表後の出尽くしであり、本格調整とは見られていない。第2・四半期(5─7月)の売上高見通しが市場予想を上回り、AI需要は堅調との受け止めが優勢で、半導体製造装置など国内の関連銘柄の追い風と解釈されている。
<イールドスプレッドは「記録的」低水準>
もっとも、足元の続伸は金利上昇一服によるリバウンドの側面も大きいとみられ、株高の持続力には不透明感もある。トランプ米大統領が20日、イランとの交渉は最終段階にあると述べたことから、紛争の早期終結への思惑で原油価格が下落。金利が低下し、買い戻しに弾みがついた。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、日本株の「イールド・スプレッド」が記録的な低水準にあることに着目する。
イールド・スプレッドは株式の益利回りから長期金利を差し引くことで示され、低下するほど株式の投資対象としての相対的な魅力低下を示す。LSEGのデータによると、25年4月には5%超あったが、株高とともに年初までには3%に低下。その後は金利の急上昇もあって13日には約15年ぶりの低水準となる2.1%に低下する場面があった。足元では2.5%程度となっている。
井出氏は「国債と比べて株の割高感が意識される水準に達しており、株価は金利上昇に敏感になっている」と指摘する。株式市場で金利高が意識されるきっかけとなったのは、米国のインフレ懸念だ。米労働省が12日に発表した4月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.8%上昇と2023年5月以来の大幅な上昇となった。イラン戦争に伴うエネルギー価格の高騰と食品価格の急上昇を受けた。
国内の長期金利が3%、米長期金利が5%を目指すような動きになるなら「(金利高を)さすがに意識せざるを得なくなる」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは話す。
原油高や金利高が一服したところにエヌビディアの決算が重なったことがAI・半導体関連株の押し上げに寄与した形だが、市場では「中東情勢に対する確信は持てないが、さほど悪くならないだろうとの思惑が足元の相場にはある」(岩井コスモの有沢氏)との見方も根強い。
再び市場の期待が空振りとなれば、原油高・金利高が再燃するリスクもくすぶる。現実に和平で合意したとしても、ホルムズ海峡の通航正常化や、被害を受けたエネルギー関連施設の復旧には時間を要するとみられ、原油は高止まりが継続する可能性もある。その場合、インフレ懸念はくすぶり続け、金利も高止まりしかねない。
<金利上昇を上回る成長期待は継続するか>
S&P500のイールド・スプレッドはすでにマイナスだが、それでも株価は高値圏にある。背景にあるのは「金利高に負けない成長期待」とりそなホールディングスの武居大暉市場企画部ストラテジストはみている。
国内の半導体企業の業績自体は悪くなく、むしろ内需企業よりも良好だと武居氏はみており「過剰にテック株を売って内需に向かうという局面ではない」と話す。直近のAI・半導体関連株の調整は、年初来で米国の半導体株を上回るピッチで業績好調を織り込んできたたことのスピード調整との見方を示す。ニッセイ基礎研の井出氏も「AIの成長力は変わらず、バリュエーションの調整が一巡すれば再び買われるだろう」と指摘する。
一方、成長への期待がしぼめば、金利高による下押し圧力が改めて意識されかねない。中国のAIモデル「ディープシーク」が25年序盤の株式相場を揺さぶったのは、低価格モデルの登場でデータセンター投資が過剰になりかねないとの警戒感が強まったためだ。
ディープシークへの懸念は沈静化したものの「いつ技術革新によって既存のデータセンターが陳腐化するかはわからず、注意が必要」と井出氏は話している。