最新記事

世界情勢入門

【地図で読む】国際的な移民の数は世界人口の3%にすぎない

移民問題には誤解が多く、実は移民の60%は、北の先進国ではなく同じ南のほかの国へ行っている

2015年11月4日(水)16時05分

 例えば、テロ組織のISIS(自称イスラム国、別名ISIL)はイラクとシリアにまたがる地域を支配し、シリア難民はヨーロッパだけでなく、隣国のトルコ、レバノン、ヨルダンにも多く逃れている。例えば、米軍の駆逐艦派遣により米中の緊張が高まっているのは南シナ海で、そこでは中国以外にも、ブルネイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムが領有権を主張している。

 そういったニュースを聞いても、ピンとこない人は少なくないだろう。シリアは中東のどのあたりにある? 南シナ海はどこからどこまでを指す? 日々流れてくるニュースは膨大だし、世界はあまりに複雑だ。いかに大切でも、「世界の今」を理解するのは簡単ではない。

 そんなときに役立つのが、地図だ――。フランスの人気TV番組から生まれた『最新 地図で読む世界情勢 これだけは知っておきたい世界のこと』(鳥取絹子訳、CCCメディアハウス)は、その名のとおり、地図を軸に据えた入門書。フランス地政学の第一人者であるジャン=クリストフ・ヴィクトルと、高校(リセ)の地理・歴史教師であるドミニク・フシャールおよびカトリーヌ・バリシュニコフが、美しい地図と写真でわかりやすく解説している。

 移民や難民、貧困ライン、温室効果ガス、ジェネリック医薬品、スラム街、デジタル・ディバイド、多国籍企業、マイクロクレジット、生物多様性......。「世界のしくみがひと目でわかる!」と謳い、50以上の地図を収録した本書から、5つのテーマを抜粋し、5回に分けて掲載する。

<*下の画像をクリックするとAmazonのサイトに繋がります>


『最新 地図で読む世界情勢
 ――これだけは知っておきたい世界のこと』
 ジャン=クリストフ・ヴィクトル、ドミニク・フシャール、
 カトリーヌ・バリシュニコフ 著
 鳥取絹子 訳
 CCCメディアハウス

※第1回【地図で読む】サッカーもジーンズも、グローバル化でこう変わった:はこちら
※第2回【地図で読む】18歳以下の「子供兵士」は世界に約25万人いる:はこちら

◇ ◇ ◇


《温かい手と手をつなぐこともない、旅立ちの苦しみ》――レオポール・セダール・サンゴール[セネガル初代大統領で、作家であり詩人]

<上の地図 国際的な移民
世界の富が不平等に再分配されていることで、貧困国の一部の住民たちはやむなく祖国を離れている。多くの場合、移民たちは南の国を捨て、同じ南のほかの国へ行っている。北アメリカやヨーロッパなど、豊かな地域にたどり着こうとする移民はごくわずかである。

なぜ人は祖国を捨てるのか?

 現在、世界じゅうに人が住んでいるのは、はるか昔に人間が移動した結果である。2011 年現在、祖国を離れて生活する人は2億3000 万人ほどだが、この数は世界人口のなかでは非常に少なく、約3%である。

「国際的な」移民とは、母国とは別の国へ、レジャーなどとは違う理由で、長期間にわたって移り住む人のことである。出国の動機はさまざまである。ある人たちは、貧困や失業、飢え、または自然災害を逃れ、仕事やよりよい生活環境を求めて行く。外国への興味もまた動機になるだろう。これらの移民はイラク人、クルド人[トルコ・イラク北部・イラン北西部・シリア北東部などに広く分布する山岳民族]、イラン人、パレスチナ人[中東パレスチナ地方に居住するアラブ人]、アフリカ人、アジア人、南アメリカ人などで、男性もいれば女性もおり、子供たちが含まれることもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、貿易協定後も「10%関税維持」 条件提

ワールド

ロシア、30日間停戦を支持 「ニュアンス」が考慮さ

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円・ユーロで週間上昇へ 貿易

ビジネス

米国株式市場=米中協議控え小動き、トランプ氏の関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中