コラム

公共図書館はこの国の民主主義の最後の砦だ......『パブリック 図書館の奇跡』

2020年07月15日(水)18時20分

公共図書館は単なる舞台ではない...... 『パブリック 図書館の奇跡』(C)EL CAMINO LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

<エミリオ・エステベスの新作、『パブリック 図書館の奇跡』は、彼の関心と感性が噛み合い、現在のアメリカに対する風刺も効いた小気味よいヒューマンドラマにまとめあげられている>

80年代に青春映画の若手俳優集団"ブラット・パック"のひとりとして注目を集めたエミリオ・エステベスは、『ウィズダム/夢のかけら』(86)以降、監督、脚本家としてもキャリアを積み重ね、独自の地位を築いている。そんなエステベスが製作・監督・脚本・主演を兼ねた新作『パブリック 図書館の奇跡』は、彼の関心と感性が噛み合い、現在のアメリカに対する風刺も効いた小気味よいヒューマンドラマにまとめあげられている。

大寒波、行き場がないホームレスの集団が図書館を占拠......

物語の舞台は、オハイオ州シンシナティの公共図書館。脛に傷を持つ実直な図書館員のスチュアートは、いつも図書館で過ごしているホームレスたちのまとめ役のジャクソンから、閉館間際に「ここを占拠する」と告げられる。大寒波の襲来で路上ではホームレスの凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターはどこも満杯で、行き場がないというのだ。

70人ほどのホームレスの窮状を察したスチュアートは、3階に留まる彼らと行動を共にし、出入口を封鎖する。それは"代わりの避難場所を"を求める平和的なデモだったが、警察との交渉に、次期市長選に出馬予定の検察官デイヴィスが割り込んでくる。スチュアートとの間に因縁がある彼は、精神が不安定な図書館員が起こした人質監禁事件であるかのように喧伝し、強硬策で解決を急ごうとする。メディアもその話題性に食いつき、フェイクニュースが拡散する。警察は突入の準備を進め、スチュアートたちは追い詰められていくが...。

ふたつの民主主義がせめぎ合い、分断された社会が見えてくる

本作を観ながら筆者が思い出していたのは、以前に取り上げたフレデリック・ワイズマン監督の『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』のことだ。このドキュメンタリーに描かれる現実を踏まえてみると、本作がより興味深いものなる。どちらの作品も、公共図書館は単なる舞台ではない。

公共図書館とは何か。『シビックスペース・サイバースペース----情報化社会を活性化するアメリカ公共図書館----』では、以下のように説明されている。

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『シビックスペース・サイバースペース----情報化社会を活性化するアメリカ公共図書館----』レイモンド・キャスリーン・モルツ/フィリス・デイン 山本順一訳(勉誠出版、2013年)


「その社会が真に民主主義社会であるかどうかの品質保証をするものが公共図書館で、公共図書館は市民の知る権利を保障し、あらゆるものにとらわれない精神的に自由な生活の守護者として、市民に開かれた、地域社会に基礎をおくひとつの社会的機関である」

ワイズマンもエステベスもそんな公共図書館の重要性を念頭に置いている。しかも、彼らの関心には共通点がある。

プロフィール

大場正明

評論家。
1957年、神奈川県生まれ。中央大学法学部卒。「CDジャーナル」、「宝島」、「キネマ旬報」などに寄稿。「週刊朝日」の映画星取表を担当中。著書・編著書は『サバービアの憂鬱——アメリカン・ファミリーの光と影』(東京書籍)、『CineLesson15 アメリカ映画主義』(フィルムアート社)、『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)など。趣味は登山、温泉・霊場巡り、写真。
ホームページ/ブログは、“crisscross”“楽土慢遊”“Into the Wild 2.0”

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