コラム

世界に広がる土地買収【後編】──海外の土地を最も多く買い集めている国はどこか

2018年03月16日(金)19時25分

土地収奪に抗議するベトナムの農民(2016年9月20日) Nguyen Tien Thinh-REUTERS

世界の大規模な土地の売買をフォローしているランド・マトリックス・データベースによると、2000年1月1日から2018年3月9日までに世界全体で売買された土地は50,534,384ヘクタール。サッカーのフィールドにして70,186,644個分で、ポルトガルの面積の5.5倍にあたります。

このなかには外国企業によるものも数多く含まれます。その土地買収は合法的なものがほとんどですが、それでも外国企業によって土地が独占的に利用され、場合によっては自然環境や現地の人たちに悪影響を及ぼすものも少なくありません。そのため、「土地収奪」はグローバルな問題として浮上していますが、規制はあまり進んでいません。

規制が進まない背景には、他国による「土地収奪」を批判する国自身が、多くの場合それと無縁でないことがあります。いわば「みんながやっているなかで自分だけやめられない」という構造自体が、「土地収奪」の最大の問題といえるでしょう。

誰が買っているか?

それではまず、世界で進む土地買収をデータからみていきます。データはランド・マトリックス・データベースのものを用います。ここでは公開されている、200ヘクタール以上の取引が対象となっていますが、オーストラリアなどデータベースから漏れている国もあります。

さて、表1は他国の土地を独占的に利用する契約を結んだ企業の出身国を、面積順に並べたものです。いわば土地を大規模に「輸入」している国のリストで、ここでは他国企業との合弁事業は除き、単独での事業に限定します。また、購入だけでなく長期リースも含まれます。

WS000195.jpg

ここからは、「輸入国」の多くが欧米諸国、アジアの新興国、中東の富裕な産油国に集中していることと同時に、米国が「輸入」面積で2位以下を大きく引き離し、世界全体の土地買収の約7分の1を占めることが分かります。一方、他国の土地を買い集めているとしばしば指摘される中国は、その対象国が米国と同じ32ヵ国で、取引成立数では米国を上回るものの、面積では4分の1以下にとどまります。

さらに注目すべきは、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、ルクセンブルクなど、国土面積が狭いにもかかわらず一人当たり諸国が高い国のなかに、大規模な土地を海外で入手している国が目立つことです。例えばシンガポールの場合、国土面積の36倍以上の土地を海外から「輸入」している計算になります。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英がイランから職員退避、各国で渡航自粛の動き 中東

ワールド

クリントン氏、エプスタイン氏の犯罪「全く知らず」 

ワールド

IAEA、イランに核査察許可求める 「不可欠かつ緊

ワールド

トランプ氏「軍事行使が必要な時も」、イランとの協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story