コラム

「ブラック・プリンセス」メーガン妃は人種差別の被害者、それとも現代のマリー・アントワネットか

2020年01月23日(木)13時30分

ロンドンのカナダ高等弁務官事務所(カナダ・ハウス)を出るメーガン妃(2020年1月7日)  Daniel Leal-Olivas/Pool via REUTERS

[ロンドン発]イギリスが欧州連合(EU)を離脱するより早く、英王室の称号と公務を放棄して王室を離脱してしまったヘンリー王子(35)と妻の元米女優メーガン妃(38)。2人は王室の桎梏を逃れて、春には晴れて民間人になるというのだが......。

メーガン妃は友人に「彼の魂は私と同じように壊されている。彼が苦しむのを見るのはもう耐えられない。王族を辞めたことは彼にとって素晴らしいことよ。それを可能にしたのが私の愛。彼の人生はこれから花開く」と話していると英大衆紙デーリー・メールが報じている。

しかし「妻のために下したこの決定に至ったのはこれ以上ない悲しみ。退くというのは軽い決断ではなかった」「本当に他の選択肢はなかった」とヘンリー王子が漏らした苦しい胸の内とメーガン妃の感じ方は天と地ほども開いている。

パートタイムの王族としてイギリスとカナダの二重生活を送り、自由に「サセックスロイヤル」のブランドを展開、自己資金を調達するのが、2人が英王室に突き付けた要求だった。しかしエリザベス女王が下したのは、2人を丸裸同然にして放り出すという厳しい答えだった。

高額の身辺警護費に厳しい視線

2人はロンドン郊外のフロッグモア・コテージの改修費240万ポンド(約3億4600万円)を返済、今後は月に賃貸料3万ポンド(約433万円)を支払う。父親のチャールズ皇太子領からの利益配分の230万ポンド(約3億3200万円)も1年限りとされ、年に60万ポンド(約8700万円)もかかる身辺警護費にも厳しい目が注がれている。

メーガン妃が長男アーチーちゃんを胸に抱き、愛犬2匹を連れてバンクーバーの豪邸周辺を散歩しているところを英メディアが隠し撮りして公開したことに対し、2人はプライバシー侵害として法的措置を取る構えを見せた。

しかし写真にはイギリスとカナダの警護官が写っていたことからバンクーバーの地元議員が「彼らの身辺警護費をカナダの納税者に付け回すな」と訴え、血税を使った身辺警護に反対する8万人以上の署名が集まっている。これが2人に対する庶民の率直な反応だ。

ヘンリー王子とメーガン妃、アーチーちゃん一家が大西洋を越えてカナダに逃げ出したのはメーガン妃がアフリカ系の血を引くことが原因だったのか。英王室に詳しい歴史家で、英レディング大学のケイト・ウィリアムズ教授はこうツイートしている。

「メーガンに対する人種差別ほど明白なものはない。人種差別的で性差別的な言葉と態度が彼女に向けられてきたのは明らかだ。結婚から2年未満で、良いことをしようとする意思を持ち、懸命に取り組んできた女性が(王室から)追い払われた」

「人々は私にハリー(ヘンリー王子の愛称)とメーガンが本当に問題なのと尋ねる。その通りよ。有色の女性が王室に嫁ぎ、2年もしないうちに追い出された。王室に関するだけでなく、イギリスと支配階層の中にある人種差別と女性蔑視に関する問題でもあるのよ」

<参考記事>英王室に爆弾を放り込んだスーパーセレブ活動家メーガン妃の野心
<参考記事>「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

26年の原油価格は下落へ、供給増で=ゴールドマン

ビジネス

FRB議長に召喚状、政権の圧力未踏の領域に 市場に

ワールド

李大統領、13日に日韓首脳会談 対中関係とのバラン

ビジネス

金が初の4600ドル超え、FRB議長捜査やイラン情
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 10
    筋力はなぜパワーを必要としないのか?...動きを変え…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story