コラム

モンペ対応、無制限残業...教員の「ブラック労働」の改善は、日本全体の「生産性向上」の試金石に

2024年11月21日(木)12時02分
教員のブラック労働の待遇改善はどうするべきか

AKIYOKO/SHUTTERSTOCK

<教員の仕事に対する前向きな感情を引き下げているのは授業以外の業務。問題の根本原因を考えると、年収を一律に引き上げる方策は効果を発揮しない可能性が高い>

このところ教員の職場環境がブラック化しているという話題がよく取り上げられる。人材しか資源のない日本にとって教育の役割は重要であり、経済成長にも大きな影響を与えている。教員の職場環境劣化はデジタル化の遅れとも密接に関係しており、日本全体に共通した働き方の問題でもある。

かつて教員は聖職とされ、個人の生活を犠牲にしてでも、児童・生徒のために奔走するのが当たり前とされていた。しかし時代は変わり、教員も労働者の一員であり、プライベートな生活を犠牲にしない働き方が求められるようになっている。


地域社会における教員に対する接し方も変わってきた。一部の保護者は、教師をサービス業従事者と見なしており、厳しいクレームを学校や教員に対して行うケースも増加している。過剰なクレームを付ける、いわゆるモンスターペアレントというような存在は以前では考えられなかった人たちと言えるだろう。

パーソル総合研究所の調査によると、教員の多くにとって保護者対応やPTA対応、調査統計への対応など、授業以外の業務が極めて大きな負荷になっていると同時に、仕事に対する前向きな感情(ワーク・エンゲイジメント)を引き下げている。一方で、授業という教員本来の業務については、負荷はそれほど大きくなく、業務に対する満足度も高い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国メーカーが欧州向けハイブリッド車輸出

ビジネス

アングル:コーヒー豆高騰の理由、カフェの値段にどう

ワールド

シリア反政府勢力、ホムス郊外の「最後の村を解放」と

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の病院に突入 一部医療職員を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 2
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 5
    水面には「膨れ上がった腹」...自身の倍はあろう「超…
  • 6
    まさに「棚ぼた」の中国...韓国「戒厳令」がもたらし…
  • 7
    「際どすぎる姿」でホテルの窓際に...日本満喫のエミ…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    「もう遅いなんてない」91歳トライアスロン・レジェ…
  • 1
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 5
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 9
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 10
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story