コラム

メルカリに続き楽天も中国IT大手と提携 「日中EC融合」で何が起きる?

2021年04月06日(火)20時25分
オンラインショッピングをする女性(イメージ)

Natee Meepian-iStock

<楽天と日本郵便の大型提携というニュースに隠れ、消費市場で着々と進む「日中の一体化」は何をもたらすか?>

楽天と日本郵政が資本・業務提携に踏み切った。市場の関心は両社の協業内容に向かっているが、実は楽天は中国のIT大手テンセント(騰訊)とも資本提携を行っている。大きなニュースにはならなかったが、メルカリも中国のIT大手アリババとの提携を発表したばかりだ。これは何を意味しているのだろうか。

楽天は日本郵政とほぼ同じタイミングでテンセントから出資を受ける。日本郵政とは異なり、資金を受け入れること以外に具体的な協業内容は明かされていないが、その狙いが越境ECであることはほぼ間違いない。

越境ECというのは、国境をまたいだネット通販サービスのことであり、アジア地域では越境EC市場が急拡大している。東南アジアの通販サイトで販売される商品を中国の消費者が購入したり、中国の商品を東南アジアの消費者が購入している。

国が異なると商習慣や通貨、言語が異なるため、誰でも簡単に外国のECサイトで買い物するというわけにはいかない。販売については、通関などの面倒な手続きがあるためさらに難易度が高まる。

このため越境EC専用のプラットフォーム企業が間に入り、場合によっては代理購買などを実施するケースが多い。これにより、双方の利用者が外国であることを意識せずに売り買いできる。

国外相手だと意識する必要なし

メルカリとアリババの提携にも代理購買システムが使われる。今回の提携で、メルカリに出品された商品の一部は、アリババが中国で運営するネット通販サイト「淘宝」と「閑魚」でも表示される。

中国の消費者がこれらの商品を注文した場合、メルカリと提携する企業が代理で商品を購入し、検品や梱包をした上で中国の顧客に発送する。メルカリの出品者から見れば、国内と全く同じ感覚で中国に商品を販売できるし、中国の消費者も日本での買い物だと意識する必要はない。

楽天とテンセントの提携も似たような形になる可能性が高く、双方の事業者や消費者が意識せずに相互に商品をやりとりできるようになるだろう。

アリババやテンセントといった中国のIT大手は近年、東南アジアのネット通販サイトを次々と買収しており、中国全土と東南アジアを網羅する巨大なEC経済圏が構築されつつある。中国のIT企業から見れば、日本はアジアに残された最後の市場と映る。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story