コラム

プリゴジン「反乱」で、ロシアは反撃の大チャンスを失った...見えてきたウクライナ「終戦」の形とは

2023年07月12日(水)18時19分

ウクライナ戦の成り行きはまた読めないものになった。当面、3つのシナリオが考えられる。

1つは権威を失墜させたプーチンが保守エリートの総意で「詰め腹」を切らされ、後任がウクライナと停戦を図る場合。ウクライナ軍も息が切れているから、停戦に応じるかもしれない。ただ双方とも不満分子が政権奪取を狙って策動を始めるかもしれず、その場合両国とも情勢は大きく不安定化するだろう。

2つ目は、プーチンが粘り腰で持ちこたえ、来年3月の大統領選で勝つために、大攻勢に出て成果を獲得、一挙に停戦を図ることである。

最後のシナリオは、ロシア、ウクライナ両国とも息を切らし、外国の主導で停戦に合意すること。戦争再燃を防ぐために、国際的な停戦保証の枠組みが必要となる。

筆者としては、3番目のシナリオが実現すればいいと思っている。

日本への影響

日本にとっての一番の問題は、ウクライナ戦争で武力行使という「タブー」をロシアが破ってしまったこと、加えてアメリカの内向き傾向が強まる兆しがあり、ドナルド・トランプ前大統領の再選の可能性も出てきたことだ。日本は自主防衛力を強化しなければならない。

またこの戦争は、国連設立国の1つで安保理拒否権も持つロシアが別の加盟国の領土を武力で占領、つまり自ら制定した国連憲章を破ったことを意味する。このままでは世界の枠組みは崩壊し、弱肉強食がまかり通る。国連憲章に違反した加盟国はその資格を停止することを総会が勧告するなど、けじめをつける外交努力が求められる。

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国の証取、優良上場企業のリファイナンス支援 審査

ビジネス

欧州、ユーロの国際的役割拡大に備えを=オーストリア

ワールド

キューバの燃料事情は「危機的」とロシア、米の締め付

ビジネス

ユーロ圏投資家心理、2月は予想上回る改善 25年7
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 9
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story