マクロスコープ:ガソリン補助、高市氏の初期方針は160円 専門家はリスク指摘
写真は高市早苗首相。2月18日、東京で代表撮影。REUTERS
Tamiyuki Kihara
[東京 12日 ロイター] - ガソリン補助の復活を巡り、高市早苗首相が当初の方針として小売価格を全国平均で1リットル=160円程度に抑えるよう政府内に指示していたことがわかった。最終的に「170円程度」としたものの、中東情勢の悪化による国民生活への打撃を強く警戒していたことがうかがえる。ただ、専門家は補助復活を「リスキーな政策だ」と懸念。一時的に価格を抑えても供給量自体が増えるわけではなく、高市政権は引き続き中長期的な対応を求められる。
<「WTIのおかげで説得できた」>
「ガソリンを1リットルあたり160円程度に抑えてほしい」。政府関係者によると、高市氏が政府内に指示を出したのは3月初旬のことだ。当時、米原油先物指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル=70ドル台。大幅な上昇が懸念され始めた時期でもあり、実務を担う省庁関係者らは財源探しに右往左往したという。
ホルムズ海峡の航行が困難となり、ほどなくWTIは急騰する。9日には一時1バレル=119ドル台に達し、政府内では国内レギュラーガソリン価格が1リットル=200円を超える可能性が指摘された。情勢の早期鎮静化は見通せず、160円との差額を政府が長期間負担することになれば財政への影響は測り知れない。先行き懸念から円安を誘発することにもつながる。高市氏の周辺は説得を試みたという。
最終的に高市氏は進言を聞き入れ、「170円程度に抑制」で落ち着いた。前出の関係者は「160円のままだったらマーケットが大変なことになっていただろう」とした上で、「WTIが119ドルまで上がったおかげで何とか高市氏を納得させることができた」と胸をなでおろした。
<「基金は数カ月で底をつく」>
ただ、いくら石油元売りへの補助で価格を一時的に下げても、供給量自体が増えるわけではない。原油の9割以上を中東から調達する日本にとって、補助をすればするほど所得の海外流出につながるジレンマもある。経済官庁幹部は「補助は根本的な解決にはならない。本来なら値段を下げるのではなく使用量を減らす取り組みが必要だ」と話す。
補助復活について、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は「国民生活に不安と混乱が広まり始めたことを踏まえれば、今回の措置は必要だと言える」とする一方、「財源は国民の負担でもある。真の意味で国民を助けることにはならないだろう」とも指摘する。
政府が補助復活の財源としている基金残高2800億円は「WTIが80ドル台で推移したとしても数カ月で底をつくだろう」と試算。当座をしのいで財源を来年度予算の予備費に移行したとしても早晩限界を迎えるとし、「補正予算の編成が必要になるのではないか」とした上で、「情勢次第で財政負担が想定以上に膨らむ可能性がある。定額の補助ではなく小売り価格を『170円程度』と定めるのはリスキーな政策だ」と語った。
高市氏は12日の衆院予算委員会集中審議で「今回の措置に関しては基金で十分に対応ができるということで、早めに計算を始めていた。軽油、重油(の価格抑制)を入れても今年度十分に対応できる」と説明。今年度内の新たな補正予算編成を否定する一方、「状況に応じて必要な手を打っていく」と述べ、来年度以降の新たな財政措置に含みをもたせた。「中東情勢が経済に与える影響はしっかり注視して、経済・物価動向に応じて、経済財政運営に万全を期していく」
(鬼原民幸 グラフィック作成:田中志保 編集:橋本浩)





