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アングル:EU首脳会議、ブレグジット以外にもある重要議題

2019年10月17日(木)11時30分

 10月15日、欧州連合(EU)は17─18日に首脳会議を開く。ブレグジット(英国のEU離脱)を巡る協議が大きな位置を占めるのは間違いないが、トルコのシリア侵攻や、向こう7年のEU予算などを巡る議論にも多くの時間が割かれるだろう。写真はブリュッセルで2日撮影(2019年 ロイター/Yves Herman)

[ブリュッセル 15日 ロイター] - 欧州連合(EU)は17─18日に首脳会議を開く。ブレグジット(英国のEU離脱)を巡る協議が大きな位置を占めるのは間違いないが、トルコのシリア侵攻や、向こう7年のEU予算などを巡る議論にも多くの時間が割かれるだろう。以下に主な議題を示した。

<ブレグジット>

今回が、月末のブレグジット期限前として最後の首脳会議となる。EU欧州委員会と英政府はここで両者が受け入れ可能な合意をまとめるべく、ぎりぎりの話し合いを続けている。

一番の対立点は、EU加盟国アイルランドと英自治領北アイルランドの国境の取り扱いだ。つまり1998年のアイルランド和平合意を損ないかねない厳格な国境管理を避けながら、EU単一市場への裏口にならないような対策をどのように講じるかが問われている。

想定される結果としては(1)31日の円滑な離脱に向けた合意の基本的な枠組みだけをまとめて法的な詳細部分の詰めを後回しにする(2)離脱期限の数日前に改めて緊急首脳会議を開く(3)離脱期限のさらなる延期──が挙げられ、これらが実現せずに合意なき離脱に至ることも考えられる。

<2021─27年のEU予算>

2021─27年の長期的なEU予算となる「多年次財政枠組み(MFF)」の取りまとめ作業は膨大だ。最大の課題は、英国離脱による不足分をどうやって穴埋めするかになる。

加盟国間ではまだ、国民総所得(GNI)のEUへの拠出比率について合意が成立していない。提案されているうち、最大比率は1.114%、最小では1.0%となっている。

EU首脳は、「リベート」と呼ばれる慣行を廃止してより公正な予算を実現していく方法も話し合う。リベートによって、特定の加盟国がEU予算への拠出金を減免されてきた。

ユーロ圏の金融ショックを和らげたり、投資や改革向けの資金をEU予算から充当する問題も議論される。

<EU拡大>

現在、アルバニアと北マケドニアがEUに加盟を申請中。実現すれば2013年にクロアチアが加盟して以降で初めてのEU拡大となる。ただ、全ての加盟国が賛同しているわけではない。

15日の閣僚級会合ではフランスがアルバニアと北マケドニアの加盟に引き続き難色を示しており、首脳会議でマクロン大統領と他の首脳の意見が対立しそうだ。

フランスは、ブレグジットや「戦略的ライバル」としての中国の台頭、ロシアがもたらす安全保障面の脅威、移民といった多くの課題に直面しているEUにとって、依然として1990年代の戦争の後遺症に苦しみ、犯罪や汚職に見舞われているバルカン半島地域から2カ国を受け入れるのはあまりにもコストが高過ぎると主張する。

こうしたフランスの姿勢により、加盟承認手続きがさらに遅れることで、両国が逆にロシアや中国との関係を深めてしまうとの懸念も浮上している。

<トルコとシリア>

EU加盟各国は14日、トルコ軍のシリア侵攻を受けてトルコへの武器輸出を制限することに合意した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコにEUとして制裁を科したわけではないが、トルコ側は非難している。

トルコが実施した地中海東部における原油・天然ガス採掘を巡って、複数のEU加盟国が不当性を指摘しており、トルコは既に欧州から厳しい視線を向けられている。

<温暖化対策>

12月にチリで「国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)」の開催が予定されているが、幾つかの加盟国はまだ、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするというEUの目標に署名していない。

一方、別の何カ国かは、温室効果ガスを1990年に比べて30年までに40%減らすという現行目標をより野心的にするよう求めている。こうした内部対立のため、9月の国連総会でEUは温暖化の取り組みにおいて主導的役割を果たせなかった。

<首脳人事の確認>

次期EU大統領にはベルギーのミシェル首相が12月1日に、次期欧州中央銀行(ECB)総裁にはラガルド前国際通貨基金(IMF)専務理事が11月1日にそれぞれ就任する予定。

ロイター
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