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焦点:米輸入規制で世界貿易・投資縮小の恐れ、各国対抗措置が鍵

2018年03月09日(金)18時23分

 3月9日、米国による鉄鋼・アルミニウム製品への輸入関税の実施は、各国が対抗措置を幅広く打ち出せば、貿易戦争の激化を招き、世界経済の成長にとって足かせとなるリスクが専門家から指摘されている。写真は輸入関税について発表するトランプ米大統領。ホワイトハウスで8日撮影(2018年 ロイター/Leah Millis)

[東京 9日 ロイター] - 米国による鉄鋼・アルミニウム製品への輸入関税の実施は、各国が対抗措置を幅広く打ち出せば、貿易戦争の激化を招き、世界経済の成長にとって足かせとなるリスクが専門家から指摘されている。

自由貿易のルールを無視する行為がまかり通る影響は、対米貿易・直接投資の消極化を通じて米国孤立化を招く恐れがあるほか、高成長で隠されてきた世界の構造問題を再びあぶりだす懸念も浮上している。

<注目される対抗関税の範囲、貿易量減少のリスクも>

トランプ米大統領が鉄鋼・アルミニウムの輸入規制に署名したことを受けて、日本の貿易の実態に詳しいある関係者は「どの国がどんな内容の対抗措置を取るのかに注目している」と指摘した。

幅広い品目で報復関税が設定されれば、米国向け輸出分が世界の需給バランスを崩し、ひいては世界経済の減速につながりかねないためだ。

米国が輸入規制をかける鉄鋼・アルミニウム自体、航空機からビール缶まで幅広い製品に使用されているため、該当する製品を生産している世界中のメーカーは、輸出先を米国から他へシフトせざるを得なくなる。

さらに各国の対抗措置の品目が農産品や他の工業製品まで広がれば、世界の貿易戦争につながり、貿易量が減少していくことも懸念される。

自由貿易を前提に、世界の貿易額(輸出額総額)は2000年代に入り6兆ドルから14年に18兆ドルと約3倍の規模に拡大した。

だが、米国以外の国が、鉄・アルミニウムだけでなく、幅広い品目を対象に報復措置を実行すれば、当該製品で需給の緩みが発生し、在庫調整に伴う成長率の鈍化という危機シナリオの可能性が高まる。

既にEU欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制)は、米国産オレンジやたタバコ、バーボンウィスキーなどに関税を適用すると述べている。また、中国が大豆やコーリャンなど米国から輸出されている農産品に対抗関税を課すとの観測もある。

国際通貨基金(IMF)は今年1月、18年と19年の世界経済見通しを3.9%に引き上げた。米国の税制改革が大きな理由とされたが、関税に伴う価格上昇や、直接投資の減退といったダメージが米国を襲うという懸念もささやかれている。

ただ、北米自由貿易協定(NAFTA)の締結国であるカナダとメキシコは関税の対象国から除外され、悪影響の程度が緩和されそうだ。 

SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏の試算によると、例外なき関税実施では、鉄鋼が8.5%ポイント、アルミニウムは9.1%ポイントのコスト上昇になるが、メキシコ、カナダの除外で、鉄鋼が6.3%ポイント、アルミニウムは5.1%ポイントとコスト上昇幅が圧縮される。

<自由貿易ルール崩壊の危機 米孤立化も>

菅義偉官房長官は8日の記者会見で「安全保障を理由とした措置は世界の鉄鋼、アルミニウム取引に動揺を与えるだけでなく、日米両国の経済関係、多国的貿易関係、世界経済にも大きな影響を与えかねない」と述べて、幅広い影響を懸念した。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏も、影響は単に貿易縮小とどまらず、米国への信用問題や自由貿易ルール自体の破壊につながると指摘する。「世界各国はルールに基づいた契約関係で貿易をしてきたが、対抗措置が広がり、ルールが勝手に破られることになれば、国同士の信用問題につながる」からだ。

熊野氏は、米国への直接投資の減退や、世界における米国の孤立化にもつながりかねないと予想する。

今回の輸入規制に対し、今年11月の米中間選挙をトランプ大統領が意識した結果との見方が米国内で広がっている。

だが、米経済が混乱し、株が下落するようなことになれば、トランプ大統領にとってもマイナスの効果を生みかねない「危うさ」をはらんでいる。

(中川泉 編集:田巻一彦  )

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