ニュース速報

ビジネス

インタビュー:原料炭確保へ自社鉱山比率高める、脱炭素にも重要=日鉄副社長

2022年11月25日(金)07時24分

 11月25日、日本製鉄は鉄鋼生産に不可欠な原料炭の安定確保のため、炭鉱の権益取得を検討する。写真は日本製鉄のロゴマーク。都内で2019年3月撮影(2022年 ロイター/Yuka Obayashi)

[東京 25日 ロイター] - 日本製鉄は鉄鋼生産に不可欠な原料炭の安定確保のため、炭鉱の権益取得を検討する。現在、約2割にあたる自社権益からの調達を増やす考えだ。森高弘副社長がロイターとのインタビューで明らかにした。

森副社長は脱炭素の流れのなかで石炭の上流投資へのハードルは相当上がっているとしたものの、「今の2割で止めておく必要はない」とし、「優良かつ経済性のある原料権益であれば取得し、自社鉱山の比率を上げていく」と述べた。

鉄鋼の主原料である原料炭の価格は、ロシアによるウクライナ侵攻直後の3月につけたピークから半値に下がった。それでも、2年前と比べると、約3倍の水準で推移している。

日本製鉄は2050年のカーボンニュートラルを掲げ、製鉄の過程で出る二酸化炭素を減らすため、高炉水素還元に取り組んでいるが、そこでも原料炭は一部必要となる。そのため、脱炭素を目指す上でも原料炭の確保は重要と位置付けている。

森副社長は、鉄鉱石の権益取得についても検討の俎上(そじょう)に上がっているが、より大きな必要性がある原料炭を優先したいと述べた。同社が保有する火力発電所の燃料となる一般炭の権益取得については、脱炭素の方針にそぐわず、株主への説明が困難として、考えていないという。

<さらなるコスト削減進める>

日本製鉄は20年3月期に4315億円の最終赤字を計上。国内に15基あった高炉を25年3月末までに10基に減らすなどの構造改革を進めている。同時に値上げを進め損益分岐点を引き下げてきたが、森副社長は収益を維持・拡大するために「まず1番目にやらないといけないのは変動費の改善」と述べた。

今年の2月に550億円で買収したタイの電炉2社については、高炉以上に変動費の比率が高いため鉄スクラップの調達を含めて日鉄の持つノウハウを投入しマージンコントロールを徹底する。汎用品を主力とするタイの電炉のような場合、生産調整を柔軟に行うことでも環境の変化に対応する。

世界の粗鋼生産は今年8月まで13カ月連続で前年同月を下回っている。同社単独の粗鋼生産も22年度は3400万トンの見通しで、昨年度から468万トン減少する。

中国のゼロコロナ政策や新興国の通貨安などに加え、各国の金融引き締めによる景気後退観測など、「世界経済の回復には相当時間がかかる」と森副社長は懸念を示した。国内では、供給網の正常化による自動車生産の回復の力強さにも欠けるという。

一方で、利益貢献に期待ができる分野として、天然ガス採掘に使われるシームレス(継ぎ目のない)鋼管などのエネルギー関連をあげた。建築向けの高耐食めっき鋼板など景気の影響を受けづらいとされる高付加価値品も伸ばし、利幅の維持も併せて来期(24年3月期)も最終増益を目指すという。

*インタビューは22日に実施しました。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、入国制限を30カ国以上に拡大へ=国土

ビジネス

USスチール、イリノイ州の高炉を再稼働へ 顧客から

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時800円安 3連騰後で利

ビジネス

イケア、NZに1号店オープン 本国から最も遠い店舗
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 8
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中