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日銀の地域景気判断、生産・消費で二極化 緊急宣言の影響注視

2021年01月14日(木)19時55分

 1月14日、日銀は公表した地域経済報告(さくらリポート)で全9地域中、3地域の景気判断を引き上げる一方、1地域の判断を引き下げた。写真は都内で2015年5月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 14日 ロイター] - 日銀が14日に公表した地域経済報告(さくらリポート)では、11年ぶりに全地域で生産の判断が引き上げられる一方で、新型コロナウイルス感染症の急拡大を受けてサービス業を中心に厳しさを増しているとの声が盛り込まれ、好調な生産と苦境に陥るサービス業の景況感の違いが鮮明となった。記者会見した各地域の支店長からは、緊急事態宣言の影響がどこまで広がるか注視する姿勢が示された。

<生産とサービス消費、二極化鮮明に>

さくらリポートは、全9地域中3地域の景気判断を引き上げる一方、1地域の判断を引き下げた。5地域は据え置きとした。

判断を引き上げたのは北陸、四国、九州・沖縄。引き下げたのは北海道。判断を引き上げた地域は前回、弱めの景気判断を示していた。四国は前回、9地域中唯一判断を据え置いていた。北海道は、コロナ感染者の急増で政府の観光需要喚起策「GoToトラベル」が全国に先駆けて停止となったことが判断引き下げにつながった。

需要項目別では、生産は9地域全てで判断が引き上げられた。全地域の判断引き上げは2009年10月以来。自動車関連に加え、電機・電子デバイスと好調業種に広がりが見られた。

個人消費は北海道、東海、中国の3地域が引き下げとなる一方、北陸と九州・沖縄の2地域は引き上げ。関東甲信越は判断を据え置いたが、昨年11月半ば以降、外食などサービス消費について減速感が強まっているとの指摘が聞かれたという。

日銀に寄せられた企業の声の中には「感染再拡大とそれに伴うGoToトラベルの一時停止の影響で、例年満室となる年末年始の客室稼働率は50%割れと散々な状況」(本店管内、宿泊業)、「カラオケなどの遊興施設では、感染再拡大やそれを受けた自治体の時短要請への対応により忘年会・新年会シーズンは壊滅的な状況」(本店管内、娯楽業)といったものがあった。

<緊急事態宣言、影響の広がりを注視>

今回の支店長会議は、政府が緊急事態宣言を11都府県に拡大する中で開催された。山田泰弘・大阪支店長(理事)は会見で、大阪の飲食業から「赤字が避けられない」、「収益が低下する」といった声が聞かれたと話し、食品業など関連業種にも影響が出てくるとの見方を示した。冨田淳・福岡支店長は、小売りなど飲食・観光以外の業界への影響をこれから点検していくと述べた。

加藤毅・名古屋支店長は、緊急事態宣言で人々の行動がどう変わっていくのか注視する必要があると指摘。「人出が落ちれば若干影響してくるところもある。去年の例で言えば、百貨店などの営業にも影響してくる可能性はなくはない」と述べた。

ただ「今回の緊急事態宣言では感染対策と経済活動のバランスが意識されている。海外でも製造業などの経済活動が維持されている。去年との違いを意識しながら、影響度合いを注意深く点検していきたい」と話した。

*情報を追加し再構成しました。

(和田崇彦、杉山健太郎 編集:田中志保)

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