ニュース速報

ビジネス

展望2020:為替相場どうなる、日米金融政策と米大統領選が鍵

2019年12月29日(日)07時44分

 来年の外為市場でドル/円は、狭いレンジ内で推移するとの見方が多い。世界経済が低空飛行を続けるなか、日米金融政策には大きな変化はないと想定されるためだ。写真は2017年6月2日、シンガポールで撮影(2019年 ロイター/Thomas White)

[東京 29日 ロイター] - 来年の外為市場でドル/円は、狭いレンジ内で推移するとの見方が多い。世界経済が低空飛行を続けるなか、日米金融政策には大きな変化はないと想定されるためだ。来年も国内企業や投資家による対外投資需要が根強いと見込まれることから、ドルが100円を割り込むリスクは小さいが、米国の大統領選挙を控えてトランプ陣営がドル安選好を強める可能性があり、上値も限定的とみられている。

市場関係者の見方は以下の通り。

●ドル/円はレンジ取引だが、リスクは円安方向

<JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長 佐々木融氏>

ドル/円相場の変動幅は3年連続で10%以下に止まる可能性が高い。その理由は、日米インフレ率の格差が縮小していることや、円がファンディング通貨として利用されなくなっていることがある。

過去の経験則では、世界的な景気後退は比較的大幅な円高を誘発する可能性がある。しかし、日本だけがリセッションに陥るケースでは円安となっている。当社の景気後退予測モデルによると、日本が1年以内に不況に陥る確率は約85%で、米国よりも40%ポイント以上高い。

さらに、本邦企業による対外直接投資や投資家による対外証券投資は円高圧力を抑制するだろう。対外直接投資は世界経済の成長率が大きく鈍化した2019年でさえ過去最高を記録した。国内での投資機会が限られる一方、200兆円以上の現金・預金を抱える日本企業は対外投資を活発化せざるを得ない状況にある。

日本の長期金利は長期間、マイナス圏での推移を続けており、来年も継続することが予想される。こうした中、本邦投資家は2020年も円売りを伴う対外証券投資を拡大せざるを得ないだろう。

仮に世界の景況感が改善した場合、実効レートベースで円安になり易い環境が整っている。 従って、円相場が想定外に大きく動くとすれば、円高よりも円安方向となる可能性が高い。

ドル/円の予想レンジ:107.00─112.00円

●トランプ主導のドル安、金融緩和でドル安も

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

日本では解散総選挙があると仮定し、2月選挙で政権・与党の勝利が判明すれば、アベノミクスの再来期待に伴う円安・株高の流れとなろう。

米国では11月の大統領選に向けて、有権者である製造業や農業団体への訴求策として、対円でのドル安強要、自動車関税の賦課が考えられる。タイミングは選挙前の9─10月の公算が大きいとみている。

世界経済の減速が続く中で、ユーロ圏も中国も自国通貨安を望むだろう。こうしたなか、トランプ大統領はドル安指向を一段と鮮明にするリスクがある。結果的に円ほどではないにせよ変動相場制を採用するユーロも分が悪い。

米金融政策については、米連邦準備理事会(FRB)は企業債務の膨張を警戒しつつも、短期金利の上昇抑止を優先させ、政府短期証券(TB)買い入れのみならず、1年超の債券購入を開始し、名実ともにQE4(量的緩和第4弾)が導入されると予想する。利下げも併用される可能性があるだろう。

企業債務問題の表面化を抑えるためのQE4や利下げは、将来にツケを回す政策であり、そのコストは米経済のみならず世界経済が最終的に負担することになるだろう。

為替相場との関連では、政策金利がマイナスの日本やユーロ圏と比べ、米国にはまだ政策金利の下げ余地がある。来年はドル金利低下に伴うドル売りの場面もあるとみている。

ドル/円の予想レンジ:102.00─115.00円

●ドルじり安も、100円割れには至らず

<三菱UFJ銀行 チーフアナリスト 内田稔氏>

来年も世界経済は低成長で、市場は時折リスク回避的な場面に直面することになるだろう。総じてみれば円もドルも幅広い通貨に対して、底堅さを維持する見通しで、ドル/円の大きな値動きは期待しづらい。ただし、FRBがドル資金の需給緩和に動き出した上、利下げ観測が浮上する場面も見込まれ、今年に比べればドル高はいくらか和らぐと考えている。

世界経済の伸びが勢いを欠けば、海外との金利差縮小とインフレ期待低下による実質金利の上昇によって、円高が進みやすい。来年のドルは各四半期に1円程度ずつ、緩やかなペースながらも軟調に推移し、年末にかけてしっかりと105円を割り込むと予想している。

ただし、100円が迫るにつれて、貿易赤字や直接投資ニーズを背景とした値頃感から、国内勢のドル買い/円売りが強まるだろう。日銀追加緩和への期待と警戒も支えとなり、100円割れには至らないとみている。

ドルも一定の底堅さは保つとみられ、100円手前で下げ渋った後、102─105円付近で年末を迎えることになるだろう。このシナリオは、米国でトランプ大統領が再選され、上下両院のねじれもそのまま残ることを仮定に置いている。

ドル/円の予想レンジ:101.00─111.00円

●リスクは円高、中国の資本流出加速ならドル100円割れ

<シティグループ証券 チーフFXストラテジスト 高島修氏>

日米金融政策や経常収支等を基に算出したドルの推計値は108円前後。つまり現在の水準は、ほぼフェアバリューにある。

市場は米中対立の緩和見通しを織り込む一方、各国の財政刺激策が景気や株価の回復を促し始めている。しかし、財政出動がすぐ金利上昇につながるわけでもない。来年も大きな変動は見込みにくいとみている。

もしドルが予想レンジから逸脱することになれば、ドル高方向で112円付近、円高方向で100円もしくはそれ以下となる可能性がある。特に、経常黒字が大きく減少してきた中国の景気失速や資本流出等には警戒が必要だ。リスクは円高方向に傾いている。

もし米中交渉の一環として通貨政策に関する合意がなされた際、それでもドル高に歯止めがかからなければ、米国がドル売り介入に踏み切る恐れがあることも、可能性は小さいが念頭に置きたい。

ドル/円の予想レンジ:105.00─110.00円

●市場のリスク許容度が拡大し、円安傾向に

<みずほ証券 チーフFXストラテジスト 鈴木健吾氏>

2019年の為替市場はリスクがドライバーとなり、安全通貨である円とドルは同じ方向に動く傾向が強まったため、ドル円の値動きは非常に限定的となった。ただ、リスクオフ局面では円買いがドル買いを上回り、リスクオン時には円売りがドル売りをしのぐ動きがみられ、ドル/円の方向性もリスク許容度に左右された。

この傾向は2020年も続くとみており、引き続き米中通商摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題、世界経済の動向等がどの程度リスクオフを引き起こすかが重要となろう。

個人的にはこれらリスクに対して楽観的にみている。

米中通商協議は来年早々にも第1段階の合意が現実となり、その後は景気減速に歯止めをかけたい中国も、大統領選を控えたトランプ陣営も一時休戦を選択すると予想する。

英国は1月末に「合意ありの離脱」に向かい、ブレグジットを巡る不透明感も後退するだろう。離脱移行期間の延長が次の問題として浮上するのは、来年終盤になるのではないか。

世界経済は経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数や半導体サイクルなどにみる循環要因、2019年の世界的な金融緩和効果などから、緩やかな回復傾向を想定している。全般的にリスク許容度は今年より来年のほうが拡大するなかで、ドルの主戦場は110―115円になると考えている。

ドル/円の予想レンジ:106.00―116.00円

(森佳子 基太村真司 編集:青山敦子)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米2月の貿易赤字、4.9%増加 輸出過去最高も輸入

ビジネス

米新規失業保険申請、9000件減の20.2万件 一

ビジネス

米国株式市場・序盤=急反落、ダウ650ドル安 イラ

ビジネス

エネ市場の緊張が金融安定に及ぼす影響を懸念=イタリ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 3
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経済政策と石油危機が奏でる「最悪なハーモニー」
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    カンヌ映画祭最高賞『シンプル・アクシデント』独占…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中