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焦点:アリババを生んだ杭州市、中国経済改革の「水先案内人」に
5月21日、中国の改革が実を結びつつある兆候は、同国東部の沿岸都市、杭州市に表れている。同市で12日撮影(2015年 ロイター)
[杭州(中国) 21日 ロイター] - 中国の改革が実を結びつつある兆候は、同国東部の沿岸都市、杭州市に表れている。中国全体の景気減速に逆らうように、杭州市では成長著しいハイテク産業やソフトウエア産業が地域経済の火付け役となっている。
浙江省の省都である杭州市は人口700万人で、上海から電車で1時間の距離にある。ベンチャーキャピタルからビッグデータ企業まで、ハイテクに関連する数百社がオフィスを構えており、衰退する製造業の代わりになるような新たな産業の集積地が形作られている。
2015年3月期の売上高が762億元(約1兆4800億円)に上り、従業員約1万3000人を抱える電子商取引最大手、アリババ・グループ
かつては家庭用品メーカーなどの一大拠点だった浙江省の変化は、中国政府が目指す経済改革の手本となる。政府は同国経済を輸出・投資主導型からサービス・最先端産業主導型に切り替えようとしており、20日に発表された今後10年の製造業発展計画「メイド・イン・チャイナ2025」でも、それは具体的に書かれている。
2014年の中国経済の6.3%を占めた浙江省は、ハイテク企業向け税優遇措置や新興インターネット企業への投資促進など、政府が推進する経済改革の恩恵を受けている。
例えば、配車アプリの快的打車(クアイディ)は、わずか3年前には従業員が10人にも満たなかったが、今では約2000人を抱えるまでに成長した。
同社の共同創業者で最高執行責任者を務めるZhao Dong氏は「クアイディの創業の地である杭州は非常に開かれた経済を持ち、新しいテクノロジーを受け入れる力も非常に高い」と語った。
杭州市西部にある新興IT企業の集積地には、シリコンバレー的な文化が根付きつつある。若い従業員たちはTシャツとジーンズにスニーカーという服装で働き、オフィスにはランニングマシンや卓球台、パーティー用のスペースなども用意されている。
2015年第1・四半期の中国の国内総生産(GDP)伸び率は同7%で、世界金融危機以来の6年ぶり低成長にとどまった。一方で浙江省の第1・四半期の経済成長率は前年比8.2%となり、前年同期の同7%から加速した。
<若者の結婚感にも変化>
杭州市だけが特別な存在というわけではない。南部の深センでもサービス部門は急速に拡大しており、中国東部の地域経済は今年わずかな減速にとどまっている。中国全体でも就労人口に占めるサービス部門の割合は高まりつつあり、2013年には製造業の30%を上回る38.5%だった。
大和証券キャピタル・マーケッツ香港のチーフエコノミスト、ケビン・ライ氏は、中国経済には地方債問題などの逆風が吹いているが、サービス部門の成長が景気の下支えになると指摘する。江蘇省や浙江省など東部の省は、地方政府の債務が最も少ない部類に入る。
オンライン茶葉販売で同国最大手の一角である芸福堂茶業のLiu Yang氏は、杭州市の企業優先の環境は、他の都市にも手本になると指摘する。
杭州市では、起業家は住宅補助が受けられ、企業は地方政府主催の交流会などに招かれる。
地方政府が主催した家電大手ハイアール・グループの視察ツアーから戻ったばかりというLiu氏は「これこそ企業を支援する政府の形だ」と語る。
浙江省経済の変化は公式統計にも表れている。2015年1─3月の投資額はサービス部門が33.3%増となり、その伸びは製造業部門の5.8%増を大幅に上回った。中でも、通信やソフトウエア、IT産業への投資は138.5%増と顕著な伸びを見せている。鉄鋼製錬部門への投資が23.6%減となったのとは対照的だ。
クアイディの広報担当Cai Jingyan氏は、杭州市の若者の間でも意識の変化が見て取れると語る。同氏によると、最近は多国籍企業や杭州鋼鉄集団などの巨大国有企業ではなく、インターネット企業での就職を希望する人が多い。
「昔は女性たちは杭州鋼鉄集団で働く男性と結婚したがったが、今はアリババで働く男性と結婚したがっている」という。
(原文:Sue-Lin Wong、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)





