アステイオン

座談会

面白さも正確さも諦めない──アカデミック・ジャーナリズムの可能性

2022年02月10日(木)16時05分
梯 久美子+山本昭宏+武田 徹 構成:村瀬 啓(東京大学大学院総合文化研究科 博士課程)

■山本 「アカデミック・ジャーナリズム」の今後は書く場所、つまり媒体と新しい書き手や論者を引っ張ってくる編集者や記者の機能も見逃せません。今号に開沼博さんも「『良き仲間』としてのアカデミック・ジャーナリズム」を寄稿されていますが、開沼さんはまだ20代の若い頃から数多くの媒体で書いておられます。

つまり20代後半でも30代前半でも、書ける人は今でもたくさんいるということです。そういう人をどうやって見つけて、どう引っ張ってくるのか。それを考えるときに雑誌の目次が参考になりますね。たとえば総合誌の雑誌の目次は、基本的には年長の「ボス」レベルの男性研究者が多いですね。それとは別に、インターネット上の言論空間は、もう少し多様にみえます。

■武田 ジャーナリズムもアカデミズムも、それぞれの追求すべき事柄を極めるのと同時に両方が重なる領域を通じて相互にフィードバックが効くようになると、それぞれにいい影響が出てくるのではないか。そう思って企画した特集ですので、「アカデミック・ジャーナリズム」がもっと定着していってほしいと思います。本日はどうもありがとうございました。


梯 久美子(Kumiko Kakehashi)
ノンフィクション作家。1961年、熊本市生まれ。北海道大学文学部卒業後、編集者を経て文筆業に。2005年のデビュー作『散るぞ悲しき――硫黄島総指揮官・栗林忠道』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。同書は米、英、仏、伊など世界8か国で翻訳出版されている。著書に『昭和二十年夏、僕は兵士だった』、『昭和の遺書 55人の魂の記録』、『百年の手紙 日本人が遺したことば』、『狂うひと――「死の棘」の妻・島尾ミホ』(読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞受賞)、『原民喜――死と愛と孤独の肖像』、『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』などがある。

山本昭宏(Akihiro Yamamoto)
神戸市外国語大学総合文化コース准教授。1984年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門はメディア文化史・歴史社会学。著書に『核エネルギー言説の戦後史1945~1960―「被爆の記憶」と「原子力の夢」』(人文書院)、『核と日本人――ヒロシマ・ゴジラ・フクシマ』(中公新書)、『教養としての戦後〈平和論〉』(イースト・プレス)、『原子力の精神史――〈核〉と日本の現在地』(集英社新書)などがある。

武田 徹(Toru Takeda)
ジャーナリスト、専修大学文学部ジャーナリズム学科教授、アステイオン編集委員。1958年生まれ。国際基督教大学大学院比較文化研究科修了。大学院在籍中より評論・書評など執筆活動を始める。東京大学先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大学人文学部教授を経て、現職。専門はメディア社会論。著書に『偽満州国論』『「隔離」という病い』(ともに中公文庫)、『流行人類学クロニクル』(日経BP社、サントリー学芸賞)、『原発報道とメディア』(講談社現代新書)、『暴力的風景論』(新潮社)、『現代日本を読む――ノンフィクションの名作・問題作』(中公新書)など多数。



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 特集「アカデミック・ジャーナリズム」
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