2023年10月にアメリカ政府は規制をさらに強化し、エヌビディアはA800やH800を中国に輸出することもできなくなった(Henshall, 2023)。ところが、2024年11月にテンセントが発表した大規模言語モデル(LLM)「混元(Hunyuan-Large)」は、H800よりさらに低性能なエヌビディアのH20というICを使って、メタの最新の大規模言語モデルLlama 3.1を上回る性能をたたき出したという(Booth, 2025)。
こうしたイタチごっこのような展開に対してアメリカの議員たちがいらだちを強め、ICの輸出規制をさらに強化しろといきり立っている(劉・屈、2025)。
しかし、IC輸出規制の強化は中国の生成AIの発展に打撃を与えるよりも、むしろアメリカのICメーカーの首を絞める可能性がある。というのは、アメリカからAI用ICを輸入できなくなれば、中国のAI開発業者たちは国産のICをもっと使うようになるだろうからである。
華為はエヌビディアのICに代替できるAI用ICとしてAscend 910シリーズを開発しており、910BはエヌビディアのA100に、910CはエヌビディアのH100に相当するといって売り込んでいる(Lin and Huang, 2024)。
また、AI用ICの専門メーカーとして寒武紀(Cambricon Technologies)という企業も成長中である。2024年の段階では、中国でのAI用IC市場の8割をエヌビディアが占めていたが(Mak, 2025)、それが手に入らなくなれば、中国のAI開発業者は華為や寒武紀などの国産ICをもっと使うようになるだろう。国産ICの生産規模が拡大すれば、その性能や品質にも好影響があるに違いない。