どちらが正しかったのかについて今さら説明する必要はないだろう。もしホンダが同省の意向に従っていたら、今の日本の自動車産業は存在していなかったはずだ。

近年、ホンダは明確な戦略を打ち出すことができず、かつてのホンダらしさをすっかり失ってしまったとの評価がもっぱらだった。だが非主流派出身の八郷隆弘氏がトップに就任したことで状況は大きく変わりつつある。

世界最大手の車載電池メーカー「寧徳時代新能源科技(CATL)」とリチウムイオン電池の開発・生産について戦略的パートナーシップ契約を締結。EV化と中国市場攻略に向けた準備を着々と進める一方、欧州市場からの事実上の撤退を決断するなど、矢継ぎ早に次世代戦略を打ち出している。自前主義にこだわってきたホンダにとって、GMとの本格提携は大きな方向転換だが、自動車産業が向かう先を考えれば、これは正しい決断といってよい。

今回、ホンダは政府の要請をはねのけ、技術の趨勢に沿った決断を行ったわけだが、本田宗一郎がつくり上げたかつてのホンダイズムがようやく戻ってきたともいえる。

<本誌2020年10月6日号掲載>

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