映画は工場の内部から始まり、終盤まで外に出ることはない。工場が彼らの世界になっている。そんな環境で、規則正しく動きつづける機械に合わせて何年も12時間労働をすれば、感覚が麻痺し、思考も失われていくだろう。
インドの現実を独自の視点で描き出している
この映画の終盤では、工場街の路上で労働者たちがカメラを囲み、そのなかのひとりがカメラの背後に立っているであろう監督に、このように訴えかける。
「あなたに力があるなら行動を起こしてくれ。誰も反対しない。あなたについていく。仕事もサボる。あなたが本気で労働者の役に立ちたいと思うなら何をすべきか教えてくれ」
この映画は、単に格差や劣悪な労働環境を告発するだけではなく、アディガが"鳥籠"と呼んだインドの現実を独自の視点で描き出しているといえる。
《参照/引用文献》
『開発なき成長の限界――現代インドの貧困・格差・社会的分断』アマルティア・セン/ジャン・ドレーズ 湊一樹訳(明石書店、2015年)
『グローバリズム出づる処の殺人者より』アラヴィンド・アディガ 鈴木恵訳(文藝春秋、2009年)