日本と同様、出版不況に直面するアメリカの出版業界――。そんな中でインディーズ(独立系)出版社は、大手出版社と一線を画し、トレンドに流されずに「とことんニッチにこだわる」姿勢を貫いてこの苦境をたくましく生き抜いている。
アメリカ最大のブックフェア「Book Expo America(BEA)」は、おもに大手出版社が図書館や書店の関係者を対象にその年に注目作品を紹介するお祭り的な要素が大きいイベントだ。そのほかにも、デジタル出版や自費出版、書店で発売する小物の展示などもあり、ネットワーク作りも盛んに行われている。
筆者は2001年からBEAに参加しているが、かつて大きなスペースを購入してARC(Advance Review Copy)と呼ばれる書評用のガリ版を大量に参加者に配っていた大手の出版社が次々と姿を消している。出版不況の影響で、イベントへの出費ができなくなっているのだろう。
2001年から現在までの大きな変化は、ノンフィクションやシリアスな文芸作品の存在感が薄れ、若者を対象にしたYA(ヤングアダルト)作品が幅を利かせるようになったこと。もともとは14~18歳の高校生を対象にしたジャンルなのだが、『トワイライト』や『ハンガー・ゲーム』といった人気タイトルが爆発的に売れ、読者層は成人にまで広がっている。映画化されることも多く、出版不況でもよく売れるジャンルなので、近年は大手出版社が特別に部門を作って力を入れている。
また、キンドルなどの電子書籍とオーディオブックとの組み合わせも、近年のトレンドだ。生き残りのためだから仕方がないとはいえ、こうした風潮を嘆く業界人は少なくない。
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その一方で、トレンドとは関係なく生き残っているインディーズ(独立系)出版社もある。大手出版社の傘下に入らず、独自路線を貫く小規模の出版社のことだ。
今年のBEAはシカゴで開催されたので、この機会にシカゴ周辺で40年以上続いている2つの出版社から話を聞いてみた。
まずは、シカゴの代表的なインディーズ出版社であるシカゴ・レビュー・プレス (Chicago Review Press)。
シカゴ大学の学生新聞「シカゴ・レビュー」の詩の書評を担当していた大学生カート・マシューズが、卒業後の1973年に妻と一緒に始めた出版社で、大学からの許可を得て大学新聞の名前を使ったという。初期に宮沢賢治の詩を翻訳出版してまったく売れなかったという残念な歴史もあるそうだ。
大手出版社では、通常社員の責任範囲は細かく分かれているのだが、シカゴ・レビュー・プレス総括責任者のシンシア・シェリー氏は、出版タイトルの選択から、編集、ビジネスのすべてに関わっている。そのシェリーによると、シカゴ・レビュー・プレスの成功の理由は次の4つに集約される。