事後に解説が必要なトランプの発言は他にもいっぱいある。ヒラリー・クリントンのメール不正削除問題について、記者会見で「ロシア、聞いているか? ぜひ行方不明になっている3万通以上のメールを見つけてほしい」と言ったのもそう。まさか、サイバー攻撃が一番恐れられている中、外国の政府に元国務長官のメールをハッキングしてほしいと、大統領候補が言ったのか?

 いや、これも後日、冗談だよ、と。

 また、最高裁の判事任命に敏感な党員を煽ろうとして、「ヒラリーが当選して、(銃規制を推進するリベラル派の)最高裁判事を任命したら、もうなす術はない。まあ、銃支持者の方々ならあるかもね......」と言った。おっと? 「気に入らない判事の任命を阻止するため、銃を持っている人なら『何か』できる」と、暗殺をほのめかす発言をしたのか? とまたまた世間が騒いだ。後に、共和党のポール・ライアン下院議長など味方が「冗談だったんだろう?」とフォローを入れることに。

 さらに、先週は「オバマがイスラム国の創立者だ」と主張した。そんなことを言ったら、本当の創立者、故ザルカウィやアル・バグダディーが怒るよ。これはさすがに冗談だろうと、「『オバマ大統領がイスラム国の生まれる環境を作ってしまった』と言いたかったんだよね?」と番組の司会者が確認するも、トランプは「いや、オバマがイスラム国の創立者だと言っているんだ」と、頑なに繰り返すばかりだった。

 日が経っても、今回は冗談だと言わなかった。今回は「皮肉だよ」と。

 これらの「冗談」は全部8月に入ってからの発言! 芸人なら、ネタ作りの早い人だ。そして、正直、ネタとしてそこまでひどくない。ただ、トランプが言うと笑えないのだ。

【参考記事】アメリカの外交政策で攻守交代が起きた

 過去にもそんな発言はあった:

「今日、ニューヨークは大雪だ。早く温暖化しないと!」

「イヴァンカちゃんが娘じゃなかったら、俺だって付き合いたいよ!」

「俺の指は長くて美しい、ほかの体の部位もそうだけど......」

など、どれも違う立場の方が違う場面でいうと十分面白い。でも、トランプは実際に温暖化を否定する共和党の代表だし、娘と同世代の人と結婚している。そして大統領候補だ。チンチン関連の発言は禁止!

 大統領候補のオーディエンスは全地球人。友達と飲んでいるときにウケるようなジョークは、性別や階級、思想などが異なるアメリカ人にはウケない。ましてや言語や文化背景が違う外国人に伝わる可能性はほぼゼロ(アメリカのユーモアが日本で通じないことを毎日痛感している僕が言うんだから間違いない)。

 大統領は、一部の支持者だけでなく全国民に、そして、全世界に通じる明確な表現を使わないといけない。友達に超ウケそうな面白いことを思いついても我慢しないと。

どの政策もばかばかしい