けれども、もっと怖いのは急激な円高です。例えば、現在のアメリカは空洞化した製造業を国内に「回収する」という壮大な社会実験を進めており、そのためにはドル安を歓迎するという政治的傾向があります。ですから、対米外交において一歩間違うと極端な円高に振れる危険性は十分にあります。その場合に怖いのは、多国籍企業の急激な業績悪化、そして株安です。
さらに恐ろしいのは、現在大都市圏に海外から流入している巨額な「不動産投資マネー」が、「高値かける円高」という事態を見て「一斉に利益を確定させるための売り」に出ることです。ここ数十年、日本の株や不動産は「割安で、しかも円安」だということで、海外からの投資対象となってきました。
そして、首都圏を中心にその価格は、実体経済からかけ離れてしまっています。バブルは「いつ弾けてもおかしくない」状態という見方もあります。そこへ急激な円高が来たら、猛烈なスピードで売りが発生してバブルは吹っ飛んでしまいます。その場合、仮に外資は売り抜けることに成功したとしても、日本国内の不動産市場は荒廃し、関連する産業は大変な苦境に追い詰められます。いずれにしても、現在の日本では「円安格差」という構造があり、その一方で円安により国家債務が外から見て縮小するなど「為替レート」は複雑な均衡の中にあります。そんな中で、急激な円安も円高も体力の衰えた日本経済には耐え難い苦痛となります。
現在は次期政権を成立させるために、連立の組み換えや首相選出に政界が揺れ動いています。そんな中、為替レートについては、首相の一言で大きく市場が変動する性格もあり、何よりも国の経済と国民生活に直結した問題です。次期首相には何としてもこの「円という通貨を守る」信念と、この点に関して世界に向かって語れるスキルが求められると思います。
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