中道からリベラルの多い、アメリカの教員たちは、以前であれば大統領選があれば中学生や高校生に対しては、模擬討論や模擬投票などに参加させて、本来の意味での有権者教育を行ってきました。ですが、コロナ禍での困難に加えて、分断が進行する社会の風潮を受けて、保護者や社会からの圧力を恐れた教員たちが萎縮していたこともあると思います。結果的に、政治に関する基本的な情報を得られずに有権者になった層とも考えられます。

さらに言えば、新聞や地上波のテレビ、あるいはケーブルテレビのニュースといった、良くも悪くも「網羅的にニュースが入ってくる」メディアが若い世代とは無縁のものになっているということがあります。結果として、過去の閲覧履歴から一方的な情報だけを送り込んでくるショート動画などに影響され、視野狭窄に陥っている世代ということも言えるでしょう。

選挙戦を通じて言われていたのは、イスラエル軍がガザ攻撃において甚大な民間人の犠牲者を出していること、そしてバイデン=ハリス政権がイスラエルを支援していることが、若者の「民主党離れ」につながるという懸念でした。人道的な観点からハリス氏を嫌悪してしまうと、より人道主義から遠いトランプ氏が勝ってしまうというパラドックスを、多くの大人たちが説教口調で懸念していたのです。

そうした現象も一部にはあったかもしれません。ですが、それよりももっと大きなエネルギーとして、Z世代には彼らならではの自分自身の現在と将来に関する不満や不安が渦巻いていたのだと思います。トランプ政権がこれに応えていくとは考えにくい一方で、明らかにハリス陣営の反応は鈍く、それが若者の不満を現職批判のエネルギーに合流させることとなってしまったのだと思います。

バイデン=ハリス政権は、学費ローンの徳政令を主張し、また全米における廉価な住宅供給案を提案していました。ですが、特に選挙戦の最終局面で、そうした具体的な政策を訴えるのではなく、イデオロギー論争を優先したことは作戦上のミスだったと言えます。

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