利益が薄ければ株価は低迷し、外資からの買収は容易になります。仮に外資に買われてしまうと、高い利益率が要求されて廉価販売のビジネスモデルは壊される可能性が高いと思います。勿論、そうならなかったケースもあります。スーパーの西友はアメリカの巨大資本「ウォルマート」に買収されて経営改革を迫られましたが、多品種を揃えないと集客ができないとか、問屋を含めた複雑な流通構造を一刀両断にはできなかったなどの理由から、外資の側が「この市場に居続けてもメリットはない」という判断をして売却してしまいました。

では、要求度の強い消費者が頑張っている限りは、薄利多売の日本型ビジネスモデルは守れるのかというと、現在はかなり状況が異なってきていると思います。円安が過度になれば、日本企業はより安く買われていきます。安く買った外資は、高利益モデルの実現のために、より大胆なリストラやビジネスの変更をしてくるでしょう。

そうなると、日本型の多品種、薄利多売の小売チェーンを守るためには、買収の危険を避けて上場廃止をすることになります。ですが、賃料と人件費という固定投資に加えて巨額の運転資金を必要とする小売ビジネスの場合に、非上場で大規模化というのは難しい話です。

今回の「セブン買収提案」というニュースは、そのように日本経済が縮小しながら外資に買い叩かれていく流れの序章のように思われます。この流れを断ち切るには、DXと準英語圏入りを加速して、国内の知的付加価値生産性を高めること、それも格差社会にするのではなく、全体の底上げをすることで35年になろうとする経済低迷の歴史に終止符を打つことが必要です。

自民党、立憲民主党、日本維新の会は、それぞれが近日中に代表選挙を迎えます。また、10月には総選挙があるとも言われています。今後も「セブン買収提案」のような事件が続いて日本経済の衰退が加速するのを許すのか、それとも長い低迷の真因を理解して徹底的な改革を主導するのか、日本経済は岐路に立っています。そのようなタイミングにおいて、日本はどのようなリーダーシップを選択するのか、極めてクリティカルな局面が来ています。「セブン買収提案」は、そのような重たい意味を突きつけていると思います。

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