[東京 4日 ロイター] - 師走の波乱相場が始まった。日米欧の中銀会合が相次いで開催され、市場はその結果に一喜一憂する見通しだ。欧州中央銀行(ECB)の追加緩和は市場で失望されたが、欧州マネーによるキャリートレード加速の可能性を高めたとの見方も出ている。

米利上げペースが緩やかとの認識が広がれば、流動性相場は再開しやすい。世界経済の足取りが弱い中で、緩和マネーが引き起こす相場の大きな「スイング」に警戒感が一段と強まっている。

<過剰な織り込みの反動>

「ここまで、相場の動きが大きくなると思わなかった」(米系投信・運用担当者)──。ECBの追加緩和は失望と受け止められたが、緩和内容が市場予想を下回るリスクも事前に取ざたされていた。マーケットに「心の準備」がなかったわけではない。

3日のECB理事会で決定されたのは、1)中銀預金金利の10ベーシスポイント引き下げ、2)資産買い取り期間の半年延長、3)地方債などに買い取り対象拡大──など。金利引き下げ幅は市場予想の下限で、資産買い取り枠の拡大も見送られたが「0点」という内容でもなかった。

だが、欧州株は3%を超える下落。ユーロ/円<EURJPY=>はそれまでの130円付近から一気に134円台に急上昇した。米株は1%強の下落だったが、4日の東京市場でも波乱はおさまらず、日経平均<.N225>は一時、450円を超える2%台の大幅下落となった。

市場の反応が予想以上に大きくなったのは、ECBの追加緩和を過剰に織り込んでいた反動が大きいとみられている。「年末までに、ユーロ下落や株価上昇などに賭けて、一稼ぎしようと思っていたヘッジファンドなど短期筋が、ポジションを一気に巻き戻した」(国内大手銀行・マーケット担当者)という。

株式市場筋によると、東京市場での寄り付き前の外資系証券6社経由の売り越し注文状況は、1000万株の大台を超えた。

<より強固になる流動性相場の素地>

ただ、市場では、ポジション調整が一巡すれば、緩和マネーを背景とした流動性相場が再開するとの見方も少なくない。

今回、ECBは中銀預金金利をマイナス0.20%からマイナス0.30%に引き下げた。下げ幅は市場予想より小さかったが、お金を預ければ利息をとられるというマイナス金利は、一段と高まった。金融機関に投資を促す効果が大きくなったほか、資金調達市場でマイナス金利が拡大すれば、運用先の利回りが多少低くても、リターンをとれる。

「ユーロを調達資金としたキャリートレードが、加速する可能性がある」と三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は指摘する。

さらにドラギECB総裁は、今回、大きな決定を理事会後の会見で発表した。買い入れた国債などの資産が償還を迎えても、元本を再投資する方針を表明したのだ。これまであいまいだったが、これで米連邦準備理事会(FRB)同様、巨大なバランスシート、つまり緩和マネーが長期間維持されることになった。

利上げを視界に入れる米連邦準備理事会(FRB)も、バランスシートの縮小には慎重だ。みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、ECBによる今回の追加緩和は「中央銀行が蛇口を開いてバスタブ(市場)に水(マネー)を大量に注ぎ込み続ける時間帯」が、さらに長期化する流れを固めたイベントとの見方を示している。

<「ブラック・マンデー」は回避か>

市場関係者が密かに心配していたのは、欧米の金融政策の方向性が真逆に動くことによる金融マーケットの不安定化だった。

「米独の金融政策の方向性の違いが、1987年のブラック・マンデーの一因となった。今回、同じ月に欧州が追加緩和、米国が利上げと正反対の金融政策を打ち出すことによる影響が懸念されていた」と、三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏は指摘する。

だが、市場の予想よりもECBの緩和内容が小粒だったことで、緩和方向の動きが弱まった。

米国も、11月のISM指数が、製造業に続き非製造業指数も市場予想を下回るなど、弱い経済指標が目立っている。弱い外需が今後、強い内需に悪影響をもたらすかが焦点だ。4日の11月雇用統計など重要指標の発表を控えているが、米利上げのペースが遅くなれれば、金融引き締め方向の力は弱くなる。

欧米の金融政策のコントラストの違いが薄まれば、市場に安定感をもたらし、流動性相場も再開しやすい。

ただ、ECBが追加緩和が小振りだったのは、ドイツ出身の幹部の反対などがあったためで、ユーロ圏の景気がいく分でも回復してきたからではないとみられている。日米欧ともに依然として緩和的な金融政策の背景にあるのは、足取りの重い景気だ。緩和マネーが実体経済からかい離して動けば、今回のように大きな反動が待っている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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