そのような「不安感」の中で、例えばエボラの問題にも過敏になるわけです。西アフリカで人道支援をしてきた医療従事者は、オバマの言うように「ヒーロー」なのか、あるいはクリス・クリスティー知事(ニュージャージー州)の言うように「住民感情を考えると強制隔離」すべきなのか。アメリカの世論全体では後者に共感する感覚があるのは確かです。

 もちろん、アメリカ人の全員がこうした「不安感」に引っ張られているのかというと、必ずしもそうではなく、依然として理想主義に燃える人々、そしてマイノリティを中心に、「自分たちの権利主張」を胸を張ってアピールする人も多いわけです。ですが、2008年にオバマを大勝させたこうした層は、今回は投票所に行かなかったのです。

 今回の選挙結果を見れば、アメリカは「内向き」であり、何よりも「世界情勢や景気の不透明感」に怯えているのだと言えます。今後の政権運営においては何よりもこの点、特にQE終了後の景気の足を引っ張らない経済政策が必要でしょう。この点でオバマはより踏み込んだ妥協をしていかなくてはならないと思います。

 具体的には、「増税で格差是正を」という姿勢は引っ込めざるを得ないでしょうし、現在の原油安で満足せずに国内のエネルギー開発を推進するなど、共和党の主張を取り入れていくことは避けられません。

 さて、今回民主党は歴史的な大敗を喫しましたが、同じ民主党とはいえヒラリー・クリントンは「そんなに傷ついていない」という見方があります。また、共和党が躍進する中で上下両院ともに多くの女性議員が誕生し、「女性大統領誕生は当然」というムードもさらに濃くなっています。今回の選挙が「オバマ時代の終わりの始まり」を告げる一方で、これを契機にヒラリー待望論はむしろ加速するように思います。

 対する共和党では、先ほど紹介したクリスティー知事が全国を応援演説で回っており、2016年へ向けて有力大統領候補としての認知を固めたようです。また、今回圧勝して再選されたウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事を加えたこの2人は、「行政のコストカッター」の実績をアピールすることで大統領選の予備選挙を「引っかき回す」存在になっていくでしょう。