ウクライナ第127独立重機械化旅団の戦車小隊長を務めるバレンティン・ボダノフ曹長(36)が戦争開始間もないことの光景として思い出すのは、リング上でボクサーがパンチの応酬をするような装甲車両同士の戦いだ。しかし戦争が5年目に突入した今、そのような展開はほぼ実現が不可能になっているという。

小型だが殺傷能力があるFPVドローン(搭載カメラの⁠映像をリアルタイムで確認しながら操縦する無人機)がウクライナの戦場で制空権を握り、装甲車両にとって少しでも動くことはリスクが極めて大きいからだ、とボダノフ氏は話す。

ボダノフ氏は「装甲車両は開けた場所に決して入っていかない。そんな場所に行けばFPVドローンやより強力なドローンから集中砲火を浴びるだろう」と説明した。

ロシア軍から奪って乗車していたT72戦車は現在、ハルキウ州北東部の雪に覆われた前線近くで防護ネットの下に隠されたままで、実質的には固定砲台の1つに成り下がってしまった。

2022年2月のロシアによる侵攻当初から軍務に従事しているボダノフ⁠氏が目にしてきたのは、テクノロジーの発達によって敵味方とも戦場における新たな計算を迫られ、伝統的な軍事戦術がひっくり返された事態だった。

1機当たりの製造費が数百ドル程度で精密な性能を持つドローン数千機が連日のように1200キロに及ぶ前線に沿って広がった「キ⁠ルゾーン」を飛び回っている。より航続距離が長く積載能力の高い強力なドローンも合流している。

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逃れられない速度