「実は、被害者のX子さんと同じ高校で...」

再犯後に府中刑務所で満期(2008年)まで受刑し、出所後は仕事もせずアパートに引きこもっていたBは2022年夏、トイレの中で倒れ、息を引き取った。死因は脳出血だったという。

ちなみに主犯格Aは行方不明。Cは2018年に傷害事件を起こし、監視役のDは脳を病んで2021年に他界した。

2人が亡くなったこともあり、「自業自得だ」と意見も出てこよう。しかし実際のところ、そう簡単に片づけられる話ではないだろう。加害者の肩を持つという意味ではなく、結局のところ、何も解決していないと言っても過言ではない。

読み終えた後も頭の片隅に残っているのは、前述した義兄の告白だ。

 

「実は、被害者のX子さんと同じ高校の同じクラスでした。彼女の席は私の後ろで、知らない顔ではありませんでした。彼女はよく隣の席の女の子と雑談していて先生に怒られていた記憶があります。目立つ存在ではなく、普通の子でした。だからすごい複雑な心境で、やりきれない思いもあります。Bはそのことを知りません」(210ページより)

Bの姉である妻からは結婚前に、弟が事件の加害者だと知らされたそうだ。宝くじに当たる確率よりも低いんじゃないかと感じたというが、「これは自分に与えられた試練だ。自分じゃないと乗り越えられない」と考えたため結婚を躊躇することはなかったようだ(最終的には離婚した)。

彼は著者の取材に対して協力的であり、客観的な立場を取り続けた人物でもある。「試練」と捉えていたことは、どことなく納得できる話でもあった。

(※リンクをクリックするとアマゾンに飛びます)

■関連記事
「俺のことわかる?」自分の彼女を殺した犯人に面会に行った男性が、知りたかったこと
「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はいま......

[筆者]
印南敦史

1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます