
本のタイトルがイメージさせるのは、絶望の淵に立つ夫婦の姿かもしれない。だが実際のところ、『夫婦はなぜ壊れるのか――カウンセリングの現場で見た絶望と変化』(山脇由貴子・著、幻冬舎新書)は、そうした描写を目的としたものではない。
ここに描かれているのは、なんらかの出来事が原因で危機的な状況に追い詰められた夫婦が、「家族問題カウンセラー」である著者のカウンセリングを通じて気づきを得、そこから再生への道筋を模索し始める姿だ。
私は都内の児童相談所で19年間、心理の専門職として勤務していました。その間、虐待を受けて来た子どもたちの心の傷や、問題を起こしがちな少年少女を目の当たりにし、気づいたことがあります。それは、子どもは自ら勝手に問題を起こしたりしない。その原因は必ずといっていいほど、家庭、そして親にあるということです。(「はじめに」より)
夫婦間のトラブルには関係なさそうに思えるが、読み進めていくと、決してそうとも言い切れないことが分かる。夫や妻の生育環境は、現在の生活にも影響を与えているようなのだ。
例えば印象的だったのは、突然「死にたい」と言い出す妻と、その不安定さを心配する夫のケースだ。まず著者のクリニックを夫の義昭さん(40歳)が訪れ、妻の美香子さん(36歳)に関する悩みを打ち明けたところからスタートする。
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