現在の事態をジョージ・フロイド殺害後に起きた抗議行動と比較するのは不適切だと、ニックは言う。
フロイドのケースは単発の出来事だったが、今は違う。権力による非人道的な扱いや暴力を記録した動画を、ニックは1日に何十本も見ている。
私は再びCの車に戻り、今度はゆっくりと市内を案内してもらった。Cにとっては愛する故郷の街だが、ICEが来てからは忌まわしい名所もできたという。「ほら、あの魚と鶏の店」とCは言った。「連中は最初、あそこを拠点にしていた」
その間も巡回ボランティアたちの交信は絶え間なく続いていた。ボランティアたちの口調は効率的で簡潔だ。
Cによれば、みんなが注意しているのは路地に止めてあるSUVやピックアップトラック、濃いスモークガラス、他州のナンバー、不規則な走行、防護ベストを着けてサングラスをかけた人影など。もう習慣になって、今はどんな車もじろじろ見てしまう。Cはそう言って笑った。
ボランティアの活動はICEの監視だけではない。立場の弱い住民がICEに遭遇しないようにするため、できる限りの手を打ってもいる。具体的には、見つかりたくない人たちの移動支援や育児支援、日常の買い物の代行などだ。
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