ミロシェビッチが前回の抗議デモの波に押され00年に失脚すると、ブチッチは「親EUの改革派ポピュリスト」に豹変。着々と支持を広げて政権の座に就いた。
今回の抗議デモの端緒となったのは、24年11月1日にセルビア第2の都市ノビサドの駅舎の屋根が崩落し、16人が死亡した事故だ。腐敗した当局がずさんな工事を許可し、誰も事故の責任を取ろうとしない事態に人々の怒りは沸点に達した。
「汚職は蔓延している。われわれは徹底的に戦わなければならない」と、ブチッチは昨年8月、メディアに語った。「私は死力を尽くしてこの戦いを率いる覚悟だ」
ブチッチの本気度はどうあれ、駅舎の手抜き工事に抗議するデモは今や、27年に予定されている選挙の前倒しを求めるデモに発展している。
「政権に選挙実施の圧力をかけるにはデモしかない」と、ベオグラードの路上にいた学生は本誌に話した。「暴力的な抗議にならないよう、僕らはベストを尽くしている」
だが治安部隊はデモ隊を蹴散らすためには手段を選ばない。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはブチッチ政権による「暴力的な弾圧」を非難している。デモ参加者は学生だけでなく多数の市民も加わっている。プロテニス選手のノバク・ジョコビッチも抗議デモ支持を表明。ブチッチをイラ立たせた。
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