しかし、これで「めでたし、めでたし」とはいかない。今年3月にあったチュニスでの博物館襲撃事件や6月に中部スースのリゾートホテルを襲った銃乱射事件など、イスラム過激派による深刻なテロ事件が続いている。チュニジアでのイスラム過激派の脅威にどの程度の広がりがあるかを知ろうとすれば、民主的選挙からドロップアウトしている部分に目を向けなければならない。
チュニジアがまだ成し遂げていないこと
2014年の議会選挙の投票総数は、11年選挙の430万人から358万人へと72万人減っている。特にアンナハダは11年選挙での得票150万票から55万票も減らしている。ほかにイスラム政党ができたわけではないのに、3分の1の得票を減らしたのは、長年活動を禁止されていたための組織力の弱さゆえだろう。減らした得票数の多くは穏健派路線を見限ったイスラム厳格派と考えることができるだろう。
チュニジアの14年選挙は一般にはニダ・チュニスとアンナハダの「世俗派対イスラム派」の構図で捉えられ、世俗派が勝利したと評価されている。実際には「世俗派対穏健イスラム派」の争いである。どちらも支持せず、選挙を拒否しているイスラム厳格派という第3の勢力が存在する。それはどの程度いるのか、アンナハダが減らした55万票か、減った投票総数の72万票か。
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独立選挙管理委員会のサイトに、有権者総数の推計は780万人超という数字があった。有権者の半数以上が投票してないのである。そのうちどの程度がイスラム厳格派の支持者かは分からない。世俗派の市民組織が主導した「国民対話カルテット」は、アンナハダというイスラム穏健派を取り込んだ形で民主化の命脈をつないだが、政治の足場は非常に脆弱である。チュニジアの問題は、投票しなかった半分の国民との関係を今後、どう修復し、政治に関わらせていくかにある。特に、イスラム厳格派との関係である。
イスラム厳格派=サラフィー主義者は本来、過激というわけではない。世俗主義の価値観によって政治や社会から排除されれば過激化するものが出てくる。チュニジアの世俗派にはイスラム厳格派を自分たちと相いれないものととらえる意識が強い。もちろん、厳格派の側も同様である。互いに排除しあえば、国は深刻な分裂状態に入っていかざるをえない。
チュニジアがこれまでに達成したのは「世俗派とイスラム穏健派」の共存であって、「アラブの春」の後に中東に蔓延したイスラム厳格派との対応は手がついていない。「テロ対策」として排除するだけでは、過激派組織「イスラム国」の支持者を増やすだけとなる。今回、ノーベル平和賞の受賞理由となった「多元的な民主主義の構築」は、実はこれからが正念場なのである。