<ロック史に刻まれる名盤『ネブラスカ』と、その誕生を描く伝記映画。どちらにも「違和感」があるが、その意味合いは異なっている──(レビュー)>

1982年の発表当時、ブルース・スプリングスティーンの6枚目のアルバム『ネブラスカ』は、多くのファンに嫌われたはずだ。

73年にデビューして以来、スプリングスティーンは社会的テーマや並外れたバックバンド、素晴らしいライブによって熱狂的支持者を獲得し続けていた。

80年には、初めてビルボードチャートでトップ10入りしたシングル「ハングリー・ハート」を送り出し、新たなファンも増えていた。

そんなロックスターが地元ニュージャージー州で、文字どおり「宅録」した作品を発表したのだ。

第2次大戦前のカントリー・ブルースのような響きを持つ『ネブラスカ』に収められたのは、ギャンブラーや殺人者や放浪者についての歌で、当初はデモテープとして録音したものだった。

しかも、シングルカットもツアーもなく、取材も受けなかった。アルバムカバーには本人の顔もない。米音楽評論家のグレイル・マーカスが、ボブ・ディランの作品『セルフ・ポートレート』について発言したように、「なんだ、これ?」とぼやいたファンは少なくなかっただろう。

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