19年にはモディ氏が農村家庭に水道を行き渡らせる計画を開始し、5年前に17%だった普及率は現在77%に達している。ただ全ての水道管に水が流れているわけではない。

バスタ氏は「これで管理が一層喫緊の課題になる。肝心の水が手に入らなければ、そうした全国的な水道網は維持できない。水道管は空っぽになるだろう」と述べた。

ひっ迫状態

農村部の比率が高いインドが水資源として頼みの綱としているのは雨期の降水量で、コメや小麦、サトウキビといった大量の水を必要とする作物は、必要な水の8割余りをそうした降水量に依存している。

しかし十分に雨が降る年でさえ、その大半は海に流れ去ってしまうのに、近年は急速な都市化のせいで集水地域が乏しくなりつつある。

政府の見通しでは、足元でインド国民1人当たりが利用できる水は年間約1486トンだが、31年までに1367トンに減少する。1人当たり1700トン未満は「水がひっ迫している状態」と定義されており、インドは11年からずっとこの状態だ。

調査機関のセンター・フォー・サイエンス・アンド・エンバイロメントのデピンダー・シン氏は「もはや毎年が危機だ。以前は正常な年もあれば干ばつの年もある形だったが、今は水不足の危機がどの年も発生し、深刻度が増している」と指摘する。

一方、民間企業の間では下水処理や水の再利用に投資する動きも見られる。

鉄鋼大手タタ・スチールは、国内工場で使う真水の量を30年までに現在のトン当たり約2.5立方メートルから1.5立方メートル未満に減らす。JSWスチールも同様の方針を掲げている。

専門家によると、家庭に供給される水の90%近くは再利用が可能だが、配水や下水処理のインフラ整備が都市化と最終的に河川に流される廃水の規模に追いつけずにいる。

政府は現在都市部で44%にとどまっている下水処理率を引き上げ、再利用や工業、農業などへ活用できるようにするため、下水施設の拡充に乗り出しているところだ。

こうした取り組みに向け、21年から26年までにおよそ360億ドルが投じられる。



[ロイター]
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