この映画で最も印象に残るのはエリザベスとグレイシーが並んで鏡の前に立つ場面だ。ただし鏡に映った姿は見えない。見えるのは洗面所のシンクの前に立つカメラ目線の2人の姿のみ。

この場面だけで2人の勝ち負けが分かる。いくら化粧をまねてもエリザベスはグレイシーに似ていない。ずっと「不当な罪を着せられた女」を演じて生きてきたグレイシーのほうが役者が上だ。

エリザベスは空っぽだ。ポートマンは完璧な演技で、それを一目で分からせる。おかげで私たちは自分を見つめ直せるし、他人の心の内側に入り込むことの難しさに気付かされる。

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MAY DECEMBER

メイ・ディセンバー ゆれる真実

監督/トッド・ヘインズ

出演/ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーア

日本公開は7月12日

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